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おぢばにおかえり
第五十五話 おぢばのバレンタインその十四

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「そうされたらどうですか?」
「それじゃあ。ただ」
 そのドーナツの箱を見て思いました。
「多いから」
「だからですか」
「ドーナツも一人じゃ食べられないわ」
「ううん、そうですか」
「一体幾つ買ってきたの?」
「六つですね」
「多いわね、どうしようかしら」
 正直悩みました、ドーナツを一度に六つは私にとっては物凄く多いです。
「これだけ多いと」
「困りますか」
「正直に言うと」
「じゃあお部屋に持って帰って」
 寮にというのです。
「それで食べてくれます?」
「じゃあ寮で皆でね」
「そうしてくれると嬉しいです」
「わかったわ、そうさせてもらうわ」
 私は阿波野君に答えました。
「それでね」
「皆で食べて楽しんで下さい」
「そうさせてもらうわね」
「是非共」
 笑顔での返事でした。
「僕は楽しんでくれたらいいですから」
「私が?」
「はい、そうしてくれたら」
「それじゃあね」
 私も頷いてでした、それで阿波野君からドーナツも受け取りました。その後少し阿波野君にお礼のことを詳しく言おうとしたら。
 阿波野君はにこりと笑って私にこう言いました。
「じゃあ今日はこれで」
「帰るの?」
「ちょっと橿原の方に行って」
 そうしてというのです。
「駅の方観てきます」
「駅っていうと」
「橿原神宮駅を」
 そこをというのです。
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