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おぢばにおかえり
第五十五話 おぢばのバレンタインその十一

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「ご期待下さい」
「それじゃあね」
「先輩の卒業と合格祝いも兼ねて」
 それでというのです。
「お返しさせてもらいますね」
「合格と卒業もなの」
「はい、ご期待下さい」
「あの、阿波野君が無理になるなら」
 私はそんな気がして阿波野君に言いました。
「いいから」
「いいんですか?」
「そうよ、そんなお金がかかったりするものなら」
「大丈夫ですよ、お小遣い貯めてますから」
「無駄遣いしないで?」
「結構貯めてるんですよ」
「それでもよ」
 幾ら貯金していてもです、私はまた阿波野君に言いました。
「だって阿波野君のお金でしょ」
「無駄遣いして、ですか」
「私に何かしなくても」
 本当にそんなことはいいと思って言いました。
「そこはお願いするわ」
「先輩って欲ないんですか?」
「欲張りじゃないとは思うけれど」
 実はこのことは自分でも思っています、ですが私が欲張りでなくてもと思ってそのうえで言うのです。
「けれど贅沢なことはね」
「いいですか」
「貰うものでも」
 教会にいますと何かと貰う、頂くことが多いですがいつも恐縮しています。それで阿波野君にも言うのです。
「いいから」
「そうですか」
「そう、本当にね」
 こう阿波野君に断りを入れました。
「お返し自体がいいから」
「いえいえ、ホワイトデーにお会い出来ないから」
 阿波野君も引かない感じでした。
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