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おぢばにおかえり
第五十五話 おぢばのバレンタインその十

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「だからいないわ」
「そうですか、こっちには」
「だからお礼はいいわよ」
「じゃあ明日お返ししますね」
「明日って」
 また早いと思いました、確かにホワイトデーの時私はおぢばにいないですが。
「もうすぐにじゃない」
「何でしたら今すぐ買いに行きます?」
 阿波野君は自分から言ってきました。
「そうします?」
「そこまでは。けれど」
 阿波野君を見上げて言いました。
「お返ししてくれるのね」
「絶対に」
「そんなことはじめてよ」
 チョコレートのお返しなんてです。
「いいのかしら」
「だって貰ったんですから」
 私ににこにことして言ってきます。
「当然ですよ」
「そうなの」
「じゃあ明日でいいですね」
「ええ、それじゃあ」
 ここで私は言いました。
「マシュマロかキャンディか」
「何でしょうね」 
 私に物凄く楽しもうに言ってきます。
「お楽しみにってことで」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「阿波野君にチョコあげるけれど」
 私はあらためてバレンタインのことを思いました。
「私がはじめて義理以外であげる人って阿波野君だけよ」
「それは有り難いですね」
「嬉しいのね」
「僕も家族以外からくれる人先輩がはじめてですから」
「はじめて同士ってことね」
「そうですね、じゃあ有り難く頂きます」
「食べるのはお家に帰ってからにしてね」
「そうします、ただ帰りお返し買っておきますね」
「それで明日なのね」
「お渡ししますから」
 このことは絶対にという返事でした。
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