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おぢばにおかえり
第五十五話 おぢばのバレンタインその六

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「このこと」
「いえ、ちょっと」
「ちょっと?」
「そうかもって思っただけで」
「そうなの」
「そうですよね、今日の放課後ですよね」
 やけに楽しそうに言ってきました。
「それじゃあ」
「何か嬉しそうね」
 阿波野君のお顔を見て気付きました。
「どうも」
「そう見えます?」
「見えるわよ、けれどね」
 私はここで思いました。
「もうチョコは買ったから」
「そうなんですね」
「昨日ね。ただね」
 どうにも気になることはといいますと。
「そのチョコでいいかしらって思ってるの」
「絶対にいいですよ」
「何でわかるの?」
「いえ、何となく」
 それでというのです。
「わかるんです」
「そうなの」
「はい、とにかくですね」
 また私に言うのでした。
「放課後詰所ですね」
「そうよ、詰所に行くわ」
 こう言ってでした、私は実際に鞄の中に入れてあったチョコレートを持って詰所に行きました。学校では誰かにチョコをあげることはなかったです。
 それで、です。学校では平和で。
 詰所に行くと事務所の方から白石さんが笑顔で言ってきました。
「待ってたよ」
「えっ、待っていたっていいますと」
「皆でね」
「皆で、ですか」
「そうだよ、チョコレート持って来たよね」
「はい」
 私は白石さんにすぐに答えました。
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