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星河の覇皇
第七十二部第三章 ジャバルという男その三十
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「よくある人物のことを最も知っているという者がいるが」
「それはですね」
「実はそうではない、むしろだ」
「その人のことを何も知らない」
「そうしたことも多い、胸を張ってそう言ってもだ」
「実は何も知らないということですね」
「知ったつもりになっているだけだ」
 その者のことをというのだ、それこそその相手が赤子であった時から知っていてもそれでもである。
「ただそれだけだ」
「つもりですね」
「つもりはつもりだ」
「それ以外のものではないですね」
「知らないということだ」
「結局のところは」
「人間は所詮人間だ」
 クリシュナータはこうしたことも言った。
「神々とは違うからな」
「知っていること、知ることが出来ることは知れたものですね」
「そういうことだと思う、だが」
「時としてですね」
「大きなことが出来る、君がそれを出来るか」
「これからですね」
「見極めさせてもらおう、私から見た今の君はだ」
 ジャバル、彼はというと。
「国家主席の器であり見事な政治も行うが」
「それ以上とはですね」
「まだ見えていない、それ以上の器かどうか」
 社会変革、マウリアのそれを成し遂げられるまでにだ。
「見極めさせてもらう」
「それでは」
「その様にな。連合では全否定されているが」
 この国からまた話した。
「ヒトラーは社会変革も行った」
「ドイツのですね」
「ドイツはまだ貴族制度が残っていた」
 欧州の他の国もだった、革命があったフランスですら貴族制が残っていてそれが強かった。もっともこの国は王政や共和制、帝政と十九世紀の間に制度が度々変わる国政の混乱がよくあった国であったが。
「しかしその貴族よりもだ」
「平民をでしたね」
「重用する様にした、流石に陸軍は違ったが」
「プロイセンの伝統が強い」
「それは中々出来なかったが」
 ルントシュテットやマンシュタインといった者達が軍の中枢にいたことでもわかる、ヒトラーも彼等の能力を認めて重用していた。
「しかしだ」
「それでもでしたね」
「社会の多くの分野においてだ」
「平民階層を重く用いたのでしたね」
「彼自身平民だった」
 わりかし生活のいい立ち場だったという。少なくとも大学を目指せるまでの資産が家にあったことは事実である。
「美術大学を目指すな」
「画家志望でしたし」
「残念だが画家にはなれなかった」
 これは当時のオーストリアの美術界が彼の作風に合わなかったからだ、残っている彼の絵画は決して悪くはないとされている。
「そうした平民出身者だったこともありだ」
「貴族への反発心も強く」
「そうしてだ」
「階級制度には否定的で」
「平民出身者が容易に社会進出出来る社会にもした」
「ナチスの下で」
「彼は社会主義者だ
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