第七十二部第三章 ジャバルという男その二十八
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「考えています」
「意識変革か」
「ただの社会変革ではなく」
それこそというのだ。
「そこまでです」
「君は考えているか」
「はい、今以上にです」
まさにというのだ。
「ヒンズー教の倫理、そして職業分化はあろうとも」
「偏見はか」
「存在しない社会をです」
「目指しているか」
「そうです、アウトカーストが差別されない」
「ハリジャンという名でもなくか」
「自然のものとして思われる」
そこまでというのだ。
「そうした国にと考えています」
「大きいな」
「そう思われますね、主席も」
「そこまでの野心を抱いた者は私は知らない」
「このマウリアに」
「人類の歴史でもそうはいなかった筈だ」
ただ栄達し国を富ませるだけでなくというのだ。
「そこまでの変革を求め実現させようなどとはな」
「そうですか」
「だからだ」
「君のその野心は大きい」
それも途方もないまでにというのだ。
「そしてそうした国家こそがだな」
「真の強国であると思います」
「優れた人材が力を発揮出来る」
「ですから」
それ故にというのだ。
「私はそうしたマウリアにしたいのです」
「アウトカーストへの偏見がなく」
「多くの者が相応しい場所で力を発揮する」
「ヒンズーの信仰は守られたうえで」
「そうです、その実現をしたいのです」
「最初からそう考えていたのか」
「政治家を志した時に」
大学生の時だ、ジャバルの。とはいってもほんの数年前でありそこから一気に今の地位に駆け上ったのだ。
「差別とそれによる非合理性を見たので」
「差別の痛みと社会へのリスクか」
「その双方から」
「アウトカースト層の人材も多いのだな」
「そのことは保証します」
ジャバルはクリシュナータに断言で答えた。
「私も多くの人材を見出しているつもりですが」
「それ以上にか」
「間違いなくいます」
だからだというのだ。
「そうした社会を目指しているのです」
「そうか、ではだ」
「それではですか」
「まずは私の地位に来ることだ」
クリシュナータは悠然とした笑みでジャバルに言った。
「いいな」
「はい、是非」
「そしてだ」
「その野心をですね」
「適えられる地位に就くことだ」
「そうさせてもらいます」
ジャバルも悠然とした笑みで答えた。
「必ず」
「その様にな」
「はい、それでは」
「どうやら私は後継者を見出した」
「それが私だと」
「君の実力をこれからその目で見せてもらう」
「そしてその目が正しいならば」
「君を私の後継者に任命するが」
しかしとだ、ジャバルはさらに言うのだった。
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