第七十二部第三章 ジャバルという男その二十七
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「私は上を考えています」
「さらにか」
「国力を高めたいのです」
「今以上にか」
「内政と外交により」
その両方の政策を行いというのだ。
「より豊かで強い国にしたいのですね」
「マウリアが好きか」
「そのつもりです」
「そうか、しかしあえて言う」
少し意地悪い笑みになりだ、クリシュナータはジャバルに言った。
「君はアウトカースト層だ」
「被差別階級ですね」
「差別されている立ち場としてはだ」
「国家をですね」
「愛情を抱いているか」
「それが問われるのですね」
「差別意識がそのまま国家への反感となっている」
このことをあえて言うのだった。
「そうではないのか」
「そうした考えもあるかも知れませんが」
「君は違うか」
「差別されているという意識はありますが」
「その偏見をか」
「跳ね返す自信があります」
こう言い切った、はっきりと。
「そしてアウトカースト層全体をです」
「マウリアに戻してか」
「それぞれの実力に相応しいものを手に入れられる社会にしてみせます」
「その自信があるのだな」
「はっきりと」
やはり否定しなかった。
「それをするのもです」
「野心なのだな」
「そうなりますね」
ジャバルはまた言った。
「やはり」
「君は野心家であることを自認しているな」
「それもかなりの」
「この国を変えたいまでの」
「ですから」
「そうだな、しかしだ」
クリシュナータはそのジャバルに言った。
「君のその野心を実現することは難しい」
「それもかなり」
「マウリアの主席になりだ」
「国を栄えさせることはですね」
「出来る、まだな」
「しかしですね」
「国家のあり方まで変えることはだ」
それはというのだ。
「非常に難しい」
「それはですね」
「社会変革は最も難しいことの一つだ」
人類の社会においてというのだ。
「特に宗教的なものはな」
「カースト制も然り」
「そうだ、ましてカースト制は何千年だ」
それこそ釈迦の時代から存在している、その頃はバラモン教でありヒンズー教の源流となった宗教であったがだ。
「連合やエウロパよりもだ」
「根は深いですね」
「それを変えるのだから」
「そうですね、しかし」
「一度はだな」
「それが変わっています」
二十世紀後半からというのだ。
「あの時はアウトカースト層でもです」
「社会への参加が進んでいたな」
「そうでした、アウトカースト層の大統領も出ました」
まだインドであった頃はだ。
「ですから」
「その頃に戻すか」
「それよりさらにです」
「進めるか」
「マウリア人の意識変革をです」
ジャバルは強い声で言った。
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