第百二十四話 三国だけでなくその十
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「北条家もだな」
「あまり好きな人は」
「実際にいないな」
「聞かないですね」
謙二にしてもだった。
「拙僧も好きではないですし」
「どうしてもな」
「義経公のことといい」
「平家に対してもそうでな」
「もう一人の弟の範頼公も」
「木曽義仲もだ」
とかく自分の敵この場合は立場を脅かすと思った者も含まれる。
「殺してしまった」
「それが源氏の因縁かも知れないですが」
「身内同士で殺し合うか」
「はい、ですが」
「そのことを考慮してもな」
「あの御仁にはいい印象がないです」
当時はそうしなければならずまた源氏の因縁があろうともというのだ。
「ですから」
「それ故に」
「拙僧も好きではなく手本にするなら」
「反面教師だな」
「そう考えています」
「源氏は誰もいなくなった」
英雄はこの歴史的事実も指摘した。
「敵は身内でも殺し尽くした結果な」
「源氏自体がでしたね」
「いなくなった、北条家もだ」
「やがてはでしたね」
「消え去った」
そうなったというのだ。
「歴史の中にな」
「鎌倉幕府が滅び」
「そうなった、だが江戸幕府はな」
「徳川家は残っていますね」
「今もな」
「江戸幕府がなくなるうとも」
「因果だな、そしてこの土佐でもな」
英雄はあらためて今の自分達の戦のことを話した。
「降ればな」
「それで、ですね」
「いい」
それでというのだ。
「立場は多少落とすかも知れないが」
「命まではですね」
「取らない」
このことは絶対だというのだ。
「敵は必ず殺す奴に降る者はいないしな」
「そのこともありますね」
「降るなら殺されるなら」
そうであるならばというのだ。
「人は生きようとする」
「だからこそ」
「殺すよりもな」
頼朝や北条氏がそうしたよりもというのだ。
「降らせてな」
「そうしてですね」
「終わらせた方がいい」
「無闇な殺生は避ける、ですね」
「勿論個人差はある」
性格はだとだ、英雄はこのことにも言及した。
「しかしだ」
「それでもですね」
「裏切る奴は切るしかないが」
「誰もが裏切るとですね」
「そうして殺すとな」
「かえってですね」
「よくはない、ましてやかつて敵でも」
例えそうであったとしてもというのだ。
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