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星河の覇皇
第七十二部第三章 ジャバルという男その九

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「全て持っています」
「そうか」
「はい、戸籍には載っていませんでしたが」
 マウリアのだ。
「彼等の戸籍はありまして」
「技術もだな」
「持っていました」
「そうだったのか」
「かなり高度化された文明でもあります」
「被差別階級といってもだな」
「マウリアにありましたので」
 それでというのだ。
「マウリアの生活水準、平均と比べやや低い」
「その程度か」
「そうしたレベルでした」
「それなりに豊かでか」
「そして総生産もです」
 それもというのだ。
「それなり以上にです」
「あるか」
「はい」
「そうか、それは意外だな」
「貧しいと思われていましたか」
「被差別階級だからな」
 この認識からだ、領事は外交官に述べた。
「どうしてもな」
「豊かかといいますと」
「そうではないとな」
「はい、しかしです」
「実はか」
「少なくとも貧しいとまではです」
 達しないというのだ。
「そのレベルです」
「餓えともだな」
「関係ありません、むしろ利権もです」
「あるか」
「彼等が独占している」
「そうなのか」
「意外ですか」
「差別されているとだ」
 領事は首を傾げさせつつ話した。
「どうしても貧しくてだ」
「職業等で差別されていて」
「何かとな、そしてだ」
「利権等もですか」
「ないとだ」
 思っていたというのだ。
「だがジャバル主席も資産があり」
「政治家として選挙に勝てるだけのものが」
「そうでもないのだな」
「そうですね、被差別階級でもです」
「独自の利権が出来るか」
「彼等しか出来ない仕事から」
 そうした仕事もあるのだ、例えば日本でも被差別階級独特の仕事がありそこからの利権もあったという。それに政治のメスを入れようとした政治家が逆に自身のスキャンダルを暴かれて失脚したという噂もある。
「生じます」
「そうしたものだな、どうも私はだ」
 領事は腕を組み言った、考える顔で。
「差別イコール悪でありだ」
「被差別階級はですか」
「その立場にいる人達は被害者でな」
「貧しく利権もない」
「それ故に差別を解消すべきだとな」
「思われていましたか」
「これまではな、しかしだ」 
 その考えはとだ、太子は自身で悟ったのだ。
「それは違う」
「差別されていてもですね」
「利権は生じるな」
「そして彼等のコミュニティーも形成される」
「それもわかった」
「そうですか」
「まだ差別への認識が甘いか」
 自身を責めもした。
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