第四章
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それでだ、里克は手段を変えてだった。申生に身の潔白を言ってそれが駄目ならすぐに他の国に逃げる様に進言した。
「既に行かれる手配はしておりますので」
「潔白を言ってか」
「それが駄目なら」
その時はというのだ。
「すぐにです」
「この国を去って難を逃れよというのか」
「はい、この度は」
「私が言えば罪は晴れるし逃げれば難を逃れられるな」
「ここはそうすべきです」
「だがそうすれば父上が讒言に踊らされたとなってだ」
献公、彼がというのだ。
「だからだ」
「ここはですか」
「父上に汚名を被らせてはならない」
「だからですか」
「私は何も言わずにだ」
父の名誉が汚れることを恐れてというのだ。
「賊共の手にかかることもなくな」
「では」
「自ら決着をつける」
こう言ってだった、彼は自ら死んだ。このことに晋の心ある者達は涙し二人だけは心の中で歓喜していた。
そしてすっかり自分達の言いなりになっている献公に重耳と夷吾もこの件をしっていたと吹き込んだ、これを機に二人も亡き者にするつもりだったが。
二人は申生とは違いそれぞれ他の国に逃げた、驪姫達は彼等は殺せなかったが自分達の血を晋の主にする邪魔者を全て消すことが出来た。
こうしてだった、二人は献公に頼んで驪姫の子を晋公にし妹の子を跡継ぎと決めた。そうして献公が死ぬとすぐに実際にそうなったが。
里克はここでだ、親しい者達に言った。
「機が来たな」
「そうだな」
「ではだ」
「すぐに立ち上がろう」
皆里克の言葉に頷いた、そして晋の心ある者達が集ってだった。
晋の王宮に兵を率いて雪崩れ込んだ、そのうえで驪姫の一族と取り巻き達を片っ端から殺していった、その中で二人の子達晋の公と跡継ぎとなっていた彼等も殺し。
里克は自らだ、驪姫達のところに行き。
怯えて必死に命乞いをする二人を容赦なく切り捨てた、そうしてこう言った。
「最初からこうしたかった」
「そうだな、これが出来ていればな」
「この様なことにはならなかった」
「申生様が亡くなられることなくだ」
「晋も乱れなかった」
「邪な者は女でも置いてはならない」
里克は強い声で言った。
「若し国に置けばだ」
「その国はこうなるな」
「今の晋の様に」
「そうなるな」
「そうだ、そうして最悪滅びる」
こう言うのだった、今はもの言わぬ骸となった二人を見ながら。
晋はこの後も騒動があり国の力が戻るのに時がかかった。そのはじまりは献公が二人の邪な者達を寵愛したことからはじまる。女であろうと誰であろうとその容姿だけで傍に置きその心の内を見ようともせず言葉を鵜呑みにすると大事を誤る。そうしたことであろうか。
謀の果て 完
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