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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第七十話 再始動する人々
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皇紀五百六十八年九月四日 棚母沢駐屯地 独立混成第十四聯隊本部
独立混成第十四聯隊 首席幕僚 大辺秀高少佐


 独立混成第十四連隊という名は敬意をもって遇される称号となった。少なくとも駒州軍の中では間違いなくそうなっている。
 集成第三軍はアレクサンドロス作戦における敵兵力のほぼ半数を壊滅状態に追いやることに成功し、〈皇国〉軍弱兵の誹りを免れる大きな要因となっているのだから当然ともいえるが。
「あぁ石井さん、お疲れ様です」
「秋山さん聞いたかい、ウチのトノサマは後四日で戻るそうだ。急ぐとのことだ」
 剣虎兵幕僚の秋山と戦務幕僚の石井が挨拶を交わす。
「ようやっと現状復旧が済んだところですし、少しは楽になると思ったのですがねぇ」

「だが我々は楽な方だ。駒州軍内でも最優先で補充と再編が行われています」
「次も使うという事だ。六芒郭救援作戦に、な」
 石井の言葉に秋山は苦笑して答えた。
「聯隊長が働きかけていましたからね。えぇもう、ありがたい事です」
 秋山は剣虎兵という兵科を育てる事に軍歴の半数をつぎ込んだようなものだ。
その点においては幼馴染である馬堂豊久以上に新城直衛への強く共感しているだろう。
「外れたいのか?」
 その秋山を試すように石井は笑いながら訪ねた
「まさか、ただ“飛び切りの”配置だと思っているだけですよ」
 剣虎兵最古参将校のとぼけた言葉に幕僚執務室に笑いが紗喚いた。

「なんにせよ、我々が一人もかけなかったのは幸運だ。おかげで――」
「おい、工兵中隊の要求している馬鋤が足りてないが調達先は決まったのか?」
 足音を立てながら砲兵幕僚の鈴木が帳面を振り回して怒鳴る。
「兵站の山下は休みだ」「病気だと?サボリか?」「食あたりだ」
鈴木がギョッとした顔で尋ねる。
「おい、ここの飯か」
 鈴木は砲兵部隊の練度を整える事に躍起になっている。
聯隊長が砲兵出身なだけあり、優遇されつつも聯隊長から最も重い期待を向けられているのが砲兵たちだ。
 ここで将校が便所にこもる羽目になったら‥‥などと考えているのだろう。
「奥方が手製の弁当を送ってきたらしい」「馬鹿かあいつ」
 舌打ちをし、どかり、と椅子に尻を下す。
「――まぁ、とにかく、やるべき事が光帯まで積みあがらずに済んだ。山積み程度でな」
「この雄大なる虎城の山々程度に」
  軽口の応酬に苛立った石井が喝を飛ばす。
「煩いぞ貴様ら」
 そうすると今度は兵器掛将校が怒鳴り込んできた・
「おい、馬鍬の調達の件誰かしらんか!」
「主計に聞け!それでわからないのならば軍兵站部に聞け!」

 そのような騒ぎから離れたところで封筒を切っては捨て、を繰り返しているのは情報幕僚の香川だ。
「おい、大隊に休養期間の予算は渡しただろ、
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