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内緒の父親
第一章

[2]次話
                内緒の父娘
 江成美穂子は結婚していない、そして仕事はごく普通の会社のOLだ。だが都内の高級マンションに母親と二人で暮らしている。
 このことは自分がどこに住んでいるのかも会社の殆どの者には内緒だが一人だけ知っている者がいた、それは彼女が勤めている会社それも系列会社全てを統括するグループの総帥である会長の矢追竜太郎だけだ。
 それは何故かというと。竜太郎は美穂子のマンションにこっそりと来てそのでっぷりと太った身体をソファーに深々と沈めて優雅にロックのブランデーを飲みながら自分に酒を入れてくれる小柄でショートヘアのはっきりとした目鼻立ちの美穂子に話した。
「お前のことはな」
「ええ、認知してくれているから」
「そしてだ」
「あの、お父さん」
 美穂子は竜太郎をどうかという顔で見つつ酒を入れながら話した。
「私別に」
「こうした部屋にか」
「悪いわよ」
 こう言うのだった。
「私一人で。しかもお掃除のハウスクリーナーの人も雇ってくれて」
「これ位わしの資産だと何でもないからな」
「グループの総帥さんだと?」
「会社は試験で入ったんだ、大学までもそうだったな」
「コネ嫌いだから」
 美穂子は竜太郎に憮然とした顔で答えた。
「だから是隊に嫌って言ったのよ」
「それで実際にそうしたな」
「受験の時も入社の時もね、今の会社はこの会社ならって思ったからだし」
 竜太郎が経営しているグループの企業だったが素晴らしい会社だと思って入社した、それで満足して働いている。
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