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真の悪
第一章

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               真の悪
 衆議院議員の在田吉富を見てだ、伊達一馬はこう言った。
「こいつ酷い奴だな」
「というかな」 
 伊達の友人である宮脇純太は共にテレビを観ている伊達に応えた。
「こいつ自身はな」
「全く悪気がないよな」
 伊達は宮脇に言った、黒髪をジェルでオールバックで固めている、四角い眼鏡がよく似合っている細面で目も口も大きなつくりだ。背は一七五位だ。
「こいつ自身は」
「ああ、それはな」
 宮脇は伊達の言葉に頷いた。背は伊達と同じ位で顔は長方形だ。目は小さめで口もだ、そして黒髪をセンター分けにしている。
「感じるな」
「そうだけれどな」
 悪意はないがというのだ。
「悪人だよな」
「紛れもなくな」
 宮脇は伊達の言葉に頷いた。
「そうだよな」
「こいつ自身はわかっていないけれどな」
 髪の毛がかなり薄く丸眼鏡でやや小柄な在田を観つつ言うのだった、テレビの中で色々言っている彼を。
「それでもな」
「悪人だよ」
「本当にそうだな」
「こんな悪い奴いないな」
 二人でこんなことを話していた、だが。
 二人の話を聞いてだ。太宰香織は彼等に首を傾げさせて尋ねた。背は一五〇で黒髪を長く伸ばしているやや吊り目に大きな口を持っている。胸は大きく肌は白い。
「あの、悪気はないんですよね」
「あいつにはな」
「そうだよ」
 二人は香織にすぐに答えた。
「悪気はないんだよ」
「悪意とかはな」
「それでどうしてですか?」
 首を傾げさせつつ言うのだった。
「悪人なんですか?」
「あいつの言ってること聞いたらわかるよ」
 伊達は香織に顔を顰めさせて答えた。
「そうすれば」
「言ってることをですか」
「そうだよ」
 それでというのだ。
「その時に」
「よくな」
「何か」
 首を傾げさせつつだ、こうも言った香織だった。
「よくわからないですが」
「だから話を聞けばな」
「よくわかるさ」
 在田のそれをとだ、伊達は香織に言った。
「本当に」
「そうですか」
「こうした奴が本当にな」
「一番ですか」
「悪いんだよ」
「邪悪ですか」
「ああ、邪悪って言ったらな」
「そうだよな」
 伊達の言葉に宮脇も頷いた。
「こいつは本当にな」
「邪悪だよな」
「それも漫画風に言えば吐き気を催す」
「そこまでの悪だな」
「何か」
 また言った香織だった、二人の話を聞いて。
「悪気がないのに邪悪とか」
「それはか」
「わからないか」
「はい、どうも」
 こう言うのだった。
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