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第百二十三話 人事刷新です。
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フィオーナはルッツを正面から見た。

「私は胸を張って言えます。ルッツ提督ならば、遠征軍総司令官として立派にやれます、と」
「おい、ルッツ」

 暖かな深みのある声がした。ワーレンだった。彼は腕組みをして一部始終を見守っていた。

「いい加減観念しろ。卿に大命が下った理由は一つだ」
「なんだそれは?」
「貧乏くじだ」
「何!?」

 ルッツの瞳が藤色になりかけたが、ワーレンは意に介さず、

「フロイレイン・フィオーナが任命に耐えられなかった以上、他の誰かがやるしかない。だが、誰がこんな大遠征軍の指揮をしたいと進んで言うと思うか?フロイレイン・フィオーナですらできなかったものをな」
「俺は――。」
「だから誰かがやるしかないのだ。その矛先にたまたま卿が座っていたというだけのことだ。恨むのであればそこに座っていた卿自身を恨むんだな。」
「・・・・・・」
「何、こう考えればよい。どうせ失敗すると思われているのであれば、かえって気が楽なのだと。フロイレイン・フィオーナですら失敗したのだから、ある意味気が楽ではないか?」
「うん?・・・うむ、それは――」
「そうであるならば、気に悩むことなどない。どうせ卿のそばには俺がいる。フロイレイン・フィオーナもフロイレイン・ティアナもフロイレイン・エレインもエーバルトも引き続き卿を補佐する」
「・・・・・・・・」
「卿自身が何もかも決める必要などない。そう硬くなるな。そう身構えるな。別働部隊総司令官の席といっても、スキールニルの卿の席がなくなったわけではないのだぞ」
「・・・・・・・・」
「あきらめろ、ルッツ」

 ワーレンの言葉は容赦がなかったが、その実どこかに温かみを秘めていた。フィオーナとティアナたちは嘆息していた。これこそが僚友ならではの接し方なのだと。

「わかった」

 ルッツが諦めた様にワーレンを見た。

「いいだろう。だが、忘れるなよ。俺に何かあれば卿も連帯責任なのだからな」
「わかっている。まぁ、卿ならばこそ俺も安堵してやっていけるさ」

 二人の提督はうなずきあった。どこからともなく拍手が聞こえてきた。それは諸提督と彼らを取り囲んでいた幕僚や従卒たちからだった。何も式典はなく、何も花束も賞状もなかったけれど、それはルッツにとってどんな式典よりもうれしかったことだった。少なくとも彼は後日そうフィアンセに述懐している。

 こうして、コルネリアス・ルッツは上級大将に昇進し、別働部隊総司令官としてフィオーナの後任に就くこととなったのである。

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