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ユア・ブラッド・マイン─焔の騎士は焦土に佇む─
第五話 高等部入学式
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まるで今知ったかのように呟いた。
 背中を触れると腫れていることを確認した氷絃は「そこまで酷くないな」と呟いて予備のモノに着替えて最後にブレザーとネクタイ、そしてブローチを身につけた。

「時間は……そろそろだな。冴空を待たせるわけにはいかない」

 スクールバッグを持ち、氷絃は冴空を迎えに魔女候補生寮を目指して出発した。
 寮から学園の敷地までは徒歩五分ほど、寮から寮までは十五分ほどかかる。
 その道中、氷絃のポケットに入れていた端末が振動する。画面に表示された名前を確認してすぐに応答する。

「もしもし、どうしたんだ姉さん」
『ひー。最近どう?』

 電話の相手は年の離れた姉である阿國 炎火(ホノカ)だ。聖境学園のOGで、前任の学園長である緑王(リョクオウ)双魔(ソウマ)時代に輩出された数少ない『プロ・ブラッドスミス』の一人である。

「特に何も。強いて言うなら契約について少し考えが変わったくらいか」
『一大事ね。頑固なひーが冴空ちゃんと契約するのを決めるなんて』
「そこまでは言ってない、本題はなんだ? ただの近況確認じゃないんだろ」
『勿論。来週の月曜日に聖境学園に行くから、その連絡ね』
「またか? 半年に一回くらいの頻度になってるぞ」
『ええ。愛してる弟に会いたいの……ダメ?』
「はいはい、どうせ断っても来るんだろ? 待ってるよ。ついでにそういう言葉は恋人にでも言ってくれ」
『……いると思う?』
「いないと思うな」
『ひーのイジワル』
「ちょっとした仕返しだ。お見合い相手に俺の連絡先を渡さないでくれ」
『善処してみる。それじゃあ、また月曜日に。いい、絶対にその日は寮に直帰して私を出迎えてね?』
「善処する。じゃあな」

 通話終了のボタンをタップしてプツリと姉との通話を終えた氷絃は変わらない歩調で冴空の待つ女子寮を目指した。

 この時、氷絃は一瞬だけ視界に、正確には『歪む世界』に佇む『誰か』にとある違和感を覚えたが──それは知らない間に馴染んで、消えた。

 数分で冴空の待つ女子寮前のベンチスペースに到着した。制服であるブレザーに身を包んだ彼女は氷絃が来たのを確認した途端、明るく嬉しそうな表情で彼の方へ駆け寄った。

「おはよう、冴空。待たせたな」
「おはようございます、氷絃くん。全然待ってませんよ!」

 冴空の髪型は三つ編みとシニヨンヘアを併せたものだ。長い髪を後頭部で三つ編みにして大きなお団子に纏める──巷では『騎士王ヘア』とも呼ばれているモノだ。何故騎士王なのか、その語源を知るものはあんまりいない。

「羽矢にしてもらったのか?」
「そうです。流石に今日は時間が無いと思ったので、羽矢にお願いしました……どうですか?」

 クルリンと一回転して髪を見せる
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