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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋が奏でし二重奏 V
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いた。戦闘が再開したコクピット入口付近と、いま居る廊下の中ごろの間の空間とは、この時を見据えて作らせた隙なのだろう。
彼女は今度こそ、理子を格闘術で圧倒するべく銃を仕舞った。お互いに組み合うような形になると、微塵も動かずに膠着している。アリアの作ったこの好機を、存分に利用させてもらおう。

彼女が言い終えるや否や、すぐさま理子の背部へと《境界を》繋ぐ。本来なら誰にも狙い得ないような場所──無警戒であるからこそ、そこは無防備なのだ。同時に、急所にもなる。
心做しか、口端が上がっているように思えた。笑みだとすれば、それはどんな笑みだろうか。憫笑とか、嘲謔とか、そんな感情が洩れてしまったのだとすれば、如何にも自分らしくない。

そんな憂慮も片隅に置きながら、理子の首筋に《緋想》の切っ先を突き付けた。僅かにでも動こうものなら、薄皮のその奥までを斬る覚悟でいる。この覚悟が、この笑みなのだろう。
今の自分の表情まで、理子が観察する余裕があるのかは知らない。けれども、寒慄したかのような表情を代わりに見せていた。「……へぇ」とだけ、誰にともなく零している。


「……だけど、ねぇ。彩斗。それだけで──勝ちを確信するのは、まだ早いと思うよ?」


理子の言葉の真意はおろか、その表層を訝しむ間すら、既に残されていなかった。気が付いた時にはもう、彼女の髪が《境界》を伝って、蛇のように手甲に噛み付いてきたのだから。
その強度は蛇よりも大きかった──思わず《緋想》の柄を握る手を離してしまうほどには。残ったものは手甲に切り刻まれた、一筋が幾重にもなった、その傷跡だけである。

そうして文字通り震懾した。理子の狙いは、今しがた手から離してしまった、この《緋想》であったことに気付かされてしまっただから──。背に悪寒が走るのと同時に、《明鏡止水》が解除される。《緋想》を握った理子の髪が、《境界》を這いずり去っていく。その刀身は、爛々と降る照明に照らされて、それこそまさに、冷酷なほどに、明鏡止水の様だった。


「──Mettons un terme ? tout ?a(終わりにしましょう)


そう零した理子の声が、やけに遠方から降ってくるように聴こえた。
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