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パンドラの箱
第六章

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「何もやる気がないではないか」
「とかく怠け者で」
「あんなことだからだ」
「国民全体がそうだからですか」
「だからだ」
 ゼウスはワインの肴のチーズも食べた、他には固いパンやハムもある。
「今の事態になるのだ」
「あの、ですが」
「あの時か」
「神罰は結局は」
「だから怠け者程度ではな」
「神罰はですか」
「与えぬわ」
 そこはと言うのだった。
「それには及ばぬ」
「それで、ですか」
「説教で済まそうと思ったが」
「それすらですね」
「昼寝するとか言ってな」
 実際に彼等は寝た、それもたっぷりと。
「あの有様だ、だからだ」
「今こうしてですね」
「自棄酒を飲んでいるのだ」
 ゼウスは自分からこう言った。
「腹が立って仕方なくてな」
「お気持ちはわかりますが」
「こうした酒の飲み方はか」
「はい、よくないです」
 ディオニュソスは酒の神としてゼウスに諫言した。
「お酒は楽しくです」
「飲むものか」
「ですから」 
 それ故にというのだ。
「ご自重を」
「今だけだ、しかしな」
「箱は開けられましたね」
「わし自身がな」
 そうしたと言うのだった。
「そうした、だからな」
「ギリシアは救われますね」
「さらなる希望が宿ったからな」
 最初のパンドラが開けた箱の中に入っていたものに加えてというのだ。
「だからな」
「必ずですね」
「ギリシアは救われる」
「それはいいことですね」
「うむ、しかしな」
「今のギリシアの者達は」
「どうにもならぬか」
 難しい顔で言うのだった、ラッパ飲みを続けながら。
「あれでは」
「確かに。私から見ましても」
「今のギリシアの者達はだな」
「怠惰に過ぎます、危機に陥っても」
「どうせ破産する、どうにでもなるではな」
「どうしようもありません」
 こうゼウスに言った。
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