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お茶の精
第八章

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「寂しくて仕方がなかったですから」
「お前さんもか」
「そうです、ですから」
「わしもか」
「死ぬまで一人とか」
「そう思うことはか」
「よくないです」
 こう鷲塚に言うのだった。
「本当に」
「そういうものか」
「はい、それと」
 お静はさらに話した。
「お茶はですよ」
「そっちはか」
「ずっと飲むべきです」
 そちらもというのだ。
「何があっても」
「そのことはな」
「最初からですね」
「思っているがな」
 今日は麦茶だ、温かくなってきたのでよく冷えたそれを飲んでそのうえで言うのだった。
「それは」
「ならですね」
「これからも飲む」
 その茶をというのだ。
「色々な茶をな」
「茶を飲んでな」
 そしてとだ、土方も言ってきた。
「暮らすにしてもな」
「一人よりもか」
「二人、三人だよ」
「そうして暮らすべきか」
「誰かが先に死んでも」
 土方はここでもこう言った。
「それを避けない」
「生きていたら絶対にあるとか」
「そう思ってな」 
 つまり受け入れてというのだ。
「そしてな」
「そのうえでか」
「やっていこうな」
「それがいいか」
「ああ、後な」
「後?」
「このお茶は本当に美味いな」
 こうも言うのだった。
「麦茶は」
「そうだな、それはな」
「こんな麦茶を飲めるなんてな」
 美味いそれをというのだ。
「幸せだしな」
「そうだな、美味いものを口に出来たらな」
 それならとだ、鷲塚も微笑んで応えた。
「それだけでな」
「幸せだろ」
「全くだ」
「人間些細なことでな」
「幸せを感じられるな」
「それならな」
 土方は鷲塚にさらに話した。
「幸せをいつも感じながらな」
「生きることもか」
「いいだろ、人間誰だってな」
「わし等みたいな爺でもか」
「幸せであっていいんだよ」
「老い先短くてもか」
「そうだよ」
 そこはというのだ。
「幸せになっていいしな」
「家族もか」
「いてくれてるとな」
 それでというのだ。
「いいんだよ」
「そうしたものか」
「だからな」
 それでとだ、あらためて言う土方だった。
「あんたもな」
「あの娘と一緒に住んでいてか」
「幸せであってもな」
「いいんだな」
「わし等は確かに老い先短いさ」
 笑ってだ、土方はこのことを認めた。
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