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Blazerk Monster
開かれるパンドラの心
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「……待たせたわね。四葉」
「いや、他ならぬ君の頼みだからね。また会えてうれしいよ、涼香」

 第一ジムのある街へたどり着き。涼香と四葉はジムの裏、人気のないところで対面していた。チャンピオンである四葉がここにいるのは、涼香がメールで呼びつけたからであり、四葉はそれにすんなり応じた。巡達は今、ジムへ挑戦中だ。四葉と会うことは話し、巡と明季葉は心配したがこれは私の問題だと言い聞かせた。

 四葉は手持ちであるジャローダのとぐろを巻いた中心に立っている。それは彼女たちのお互いの信頼の証だ。涼香の傍らで唸り声をあげ両者を睨むヘルガーと涼香の関係とは決定的に違う。
 
「……と言いたいところだけど。早速要件を聞こうか。わざわざ僕を呼び出した用は何かな? まさか、そのヘルガーで僕に勝てると思ったのかい?」

 そんな関係を一目で見抜いたのか、四葉は眼を細め、退屈そうに言った。涼香はそれを焚きつけるように強い口調で返す。

「いいえ、勝つつもりなんてないわ。まだ旅は続ける。でもその前に……四葉に確認しなきゃいけないことがあるの」
「確認? 僕が前言ったことを忘れたのかな? 今僕と問答をしたとして、全てを失った君にそれが事実だと確認できるとでも?」

 四葉の表情は薄く微笑んで、頭の悪い子供に諭すように言う。内容は、涼香の部屋の前で語ったことと同じ。

「もういいのよ、四葉」
「……もういい?弟を殺した相手に何も聞かず、仕返しもしなくていいというのかい? 涼香らしくもないね」

 四葉はせせら笑う、涼香の心が痛む。彼女が自分にそんな声音を向けるなど昔は思いもしなかった。
 だからもう、それを終わらせなければならない。涼香ははっきり首を振った。

「四葉は、私の弟を殺してなんかいない。あの子は……私が死なせたんだから」
「……」

 それを認めることは、涼香のしてきたことの全てを否定することだった。チャンピオンになると誓ったあの旅路も、四葉への復讐を志したこの旅も、意味を失う。それでも、自分は認めなければいけない。

「私はどうしてもあの決勝戦に勝ちたかった。どんなことをしても、たとえ汚い手を使ってでも。でもそれは、私だけじゃなかった。四葉だって……いえ、四葉の方がずっと勝ちたい思いが強かった。そうでしょ」
「何を言うかと思えば笑わせないでほしいね。一年間僕に騙されたことにも気づかず落ちぶれた君に僕の本心の何がわかるっていうんだい?」
「わかるわよ」

 旅に出る前、四葉の両親と話した時も。四葉がこの旅を成功させるために多くの改案を出し、巡達の旅を安全にしていることも。涼香は知っている。

「病弱で、誰よりも体が弱くて、旅の途中で何回も寝込んで、それでも私と同じようにジムバッジを集めた四葉が……どれだけチャン
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