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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン11 鉄砲水の襲撃者
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そしてその翌日。とりあえずいつも通りに出勤したはいいが昨夜の「幽霊騒ぎ」の顛末が気にかかりなんとなく仕事に集中できない―――――糸巻の場合は鳥居曰く「いつでもなんのかんの理由付けて仕事しないから平常運転」な時間を過ごしていたところに、突如事務所の電話が鳴り響いた。本来彼らの配置的に電話に近いのは糸巻の方なのだが、電話番すらまともにやろうとしない彼女に代わり応対するのは基本的に鳥居の仕事である。
 だがこの時受話器を取ったのは、意外にも糸巻だった。それはいかなる気の迷いか、天変地異の前触れか……あるいは彼女には何か、予感がしたのかもしれない。そして、その予感は的中する。果たしてその向こうから聞こえた声は、彼女の妹分のものであった。

『あの、お姉様ですか?私です、八卦九々乃です!お姉様、それに鳥居さんも。お姉様相手にぶしつけなお願いですが、今から少しだけ七宝(うち)にご足労頂くわけにはいきませんか?その、昨日のことで少し……あ、おじいちゃん!ううん、なんでもな……え、昨日の話?何かって?え、えっと……と、とりあえず切りますねお姉様!』

 それきり切れた電話を戻すと、いつの間にか横に来て立ち聞きしていたらしい鳥居と目が合った。ちゃっかりした奴だと半ば呆れつつも、説明の手間が省けたと単刀直入に問いかける。いや、それはもはや問いかけですらなく、ただの確認だった。いつだって糸巻太夫とは、そういう女なのだ。

「行くぞ鳥居、ちゃんと戸締りやっとけよ。うちが泥棒なんてやられたら笑いもんだ」
「はーい。よくわかんないけど行ってみますか、糸巻さん」

 そしてそこで一切の不平不満を口にせず、きっぱりと行動に移る。鳥居浄瑠もまたそういう男であり、このように根本的なところで変に気が合うからこそこの性格も何もかもが違う2人はタッグを組めているのだ。
 そしてどちらも、いざ行動となるとその判断も含め妙にその動きが素早いという点で一致する。「カードショップ 七宝」に2人が辿り着いたのは、電話を受けてからきっかり15分後のことだった。

「たぁのもぉーう!来たぜ、八卦ちゃん!」
「同じく……って、えぇ……」
「あ、こんにちわー」

 相も変わらず閑古鳥が鳴くどころか巣まで作って越冬していそうな店内の奥、デッキ構築や卓上デュエル等の需要にこたえるために設置されたのであろうテーブルスペース。その一角に座ってなんとも困った笑顔の八卦と共に屈託のない笑顔を浮かべ彼女たちに手を振るのは……遊野清明と名乗った少年、その人だった。
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