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アジア的優しさのこいし
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In America, you always find a party.
(アメリカでは、あなたはパーティーを楽しむ)
In Soviet Russia, a party always finds you.
(ソビエト・ロシアでは、党があなたを監視する)




 聡明なソ連人には5つの戒めがある。


 1. 考えるなかれ。
 2. 考えたなら、喋るなかれ。
 3. 考えて喋ったなら、メモするなかれ。
 4. 考えて喋ってメモしたなら、サインするなかれ。
 5. 考えて喋ってメモしてサインしたなら、驚くなかれ。


「あなたは知りすぎたようね。シベリアへ送ってあげましょう」
「いやだああああああああぁ!! そ、それだけはやめてくだ――――!!!」
「連れていけ」


 古明地こいしは、恐れられている。泣く子も黙る秘密警察を率いるのが彼女だからだ。


 だが、それ以上に恐れられているのはその能力ゆえだろう。さとり妖怪である彼女は人の心が読めるのだ。どんな犯罪者もこいしの前には無力だった。


「はい、粛清完了」


 
 今日も一人の聡明なソ連人がシベリアへ片道切符のバカンスに送られた。しかしながら、犯罪者――思想犯や政治犯も含む――を容赦なく粛清する彼女だが、昔は気弱で大人しい少女だった。人の心を読むのに疲れ果て、自らの力を封印して、あてどなく漂っていたのである。
 

 そんなとき出会ったのが、フランドール・スカーレットだった。こいしの上司であり、狂信的な愛情を注ぐ絶対的な対象である、
 今日も今日とて、フランドールのために思想犯をルビヤンカの地下送りにしていた。きっと笑顔で拷問を楽しむのだろう。想像するだけでぞくぞくとして、笑みがこぼれる。


「おっと、いまは仕事をしないと」


 今でも思い出す。あの真夏のシベリアの大地でフランドールと出会った日を。
 

 心を読む能力が嫌で嫌でたまらなかった自分を、彼女は優しく諭してくれた。フランドールもまた、自らの能力に振り回された経験をもっており、こいしに親近感を抱いたのだろう。
 彼女は、こいしにささやいた。


『せっかくの能力だから、思いっきり利用して人生楽しめばいいのよ』


 事実、フンドールはその破壊に特化した能力で、姉のレミリアの敵を文字通り粉砕していた。
 そんなフランドールにとって、敵対者の心を読めるこいしの能力は喉から手が出るほど欲しかったのだろう。
 いや、それ以上に、フランドールにとって、こいしは自らのあり得た未来だったのかもしれない。もしレミリアがいなければ、こいしの立場にいたのは、あるいは自分だったのかも、と。


 こうして、ソ連にこいしは加わった。約束通り、
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