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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
自動自在 念動剣
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ら覚めたかのようだ。憎悪と憤怒が、晴れてゆく。おぬしと剣を交えた瞬間、人に、最……期、人として、剣士として、死ねる……。礼を言う、ぞ……ホーゲン」
「…………」

つい先ほどまでの激しい剣劇が、血風の吹き荒れていた修羅場が嘘のような静寂に包まれた。

(竜破墜天流のアイゼル……)

 ホーゲンにはその名前に聞き覚えがあった。
 彼はこの世界に召喚された際にカートの記憶と知識を得ている。それだけにとどまらず、積極的に書物を漁り、街を歩き、仕事をして人々と交友することでこの世界の出来事について学んでいた。
 竜破墜天流のアイゼル。帝国でも一、二を争うほどの剣豪だったが、剣術自慢の貴族から疎まれ、決闘を挑まれた。
 受けるべきではない。わざと負ける、せめて引き分けに持ち込むべきだ。という周囲の声を押しきって正々堂々と闘い、相手の貴族を打ち負かした。
 それを恨んだ貴族によって後日、毒を盛られて自由を奪われたところを闇討ちされ、利き腕を切り落とされた。
 それ以降、消息を絶ち、行方を知る者はいない――。

「お、終わったのか? そいつはもう死んだのか? ああっ!? あんた血が! 怪我をしているじゃないか!」

 隅に隠れていた店主や店員が顔を出して来る。

「このくらいなら治癒魔法の心得があるから平気だ。それよりも災難だったな」
「ああ……。こんなに滅茶苦茶になっちまって、明日からどうしたらいいんだ……。て、こいつ魔人なのか!? は、早く警備官を呼んでこないと」
「おっと、役人に詮索されるのはごめんだ。俺のことは適当に誤魔化しておいてくれ。こいつは店への迷惑料だ」

 法眼は金貨の詰まった皮袋を店主の手に握らせた。

「こ、こんなに!」
「そいつで内装を一新するなり新しい店を買うなり役立ててくれ。それじゃあ俺は失礼するから、役人には適当なことを言っておいてくれ」

 店を出た法眼は馬を繋いである宿まで行き、すぐに街を発った。
 どうも胸騒ぎがしてならない。
 王都で異変が、カートの身に良くないことが起こりそうな気がする。
 わずかな期間で身につけた馬術を駆使して王都へと駆ける。
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