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戦国異伝供書
第四十三話 関東のことその十二

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「我等自身はじゃ」
「決してですな」
「敵を追わずですな」
「そして全軍川を渡り」
「軍勢を固めることですな」
「そうじゃ、そうせよ」
 こう命じてだった、晴信は敵が騎馬隊と幸村達に兵を向けた隙を見てだった。
 即座に川を渡らせた、その動きは素早く村上が気付いた時にはだった。
 千程の者達が川を渡り終えこちらに槍や弓矢を向けていた、しかも続々と川を渡ってきていた。
 それを見てだ、村上は小笠原に言った。
「ここは攻めたいが」
「ならぬか」
「してやられた、我等が夜に敵に対そうとしていてな」
「その隙にじゃな」
「武田殿は川を渡った」
「もう千は渡っておるな」
「しかもどんどん渡ってきておる」
 千の者達だけでなくだ。
「ここから攻めてもな」
「もう武田家が川を渡ることは防げぬな」
「うむ、だからな」
 それでと言うのだった。
「ここはじゃ」
「仕方ないか」
「一旦退き」
 そうしてというのだ。
「布陣を整えてじゃ」
「武田家と戦うか」
「川を渡らせては仕方ない」
 諦めるしかない、そうした言葉だった。
「だからな」
「ここはじゃな」
「今攻めても兵を失うだけ」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「あらためて戦を挑む為にな」
「退き」
「あらためて叩くとしよう」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 村上は小笠原と共に兵をまとめてそうして多くの軍勢と率いてそのうえで退いた。かくして晴信は無事に軍勢を川を渡らせた。
 しかしそれでもだった、晴信は油断せず諸将に言った。
「わかるな、川を渡っただけではな」
「勝ちではない」
「左様ですな」
「むしろこれからですな」
「これからどうするかですな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「戦じゃ」
「戦にどう勝つか」
「そのことですな」
「我等は二万じゃ」
 この数から言うのだった。
「対する敵は八千」
「二倍以上ですな」
「二倍以上の敵とどう戦うか」
「そう考えると」
「敵は迂闊には攻めず」
 そしてというのだ。
「慎重に守りを固めてな」
「戦われますか」
「我等は今は騎馬隊を出しておるが」 
 既に武田家といえば騎馬隊が有名になっている、先の小笠原家との戦で知れ渡ってきているのである。
「その騎馬隊に対してもじゃ」
「どうしてくるか」
「騎馬隊は確かに強い」 
 晴信はまた言った。
「しかしな」
「それでもですな」
「弱点はある」
 山本にこう話した。
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