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大学の怪異
第五章
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「これは」
「左様ですね」
「あの絵だけれど」
 ボームは美術館のその聖俗の絵について話した。
「開校の時からあったけれど」
「それが、ですね」
「観て」 
 ボームはヘミングウェーに今読んでいる書を見せた、それは大学の創成期のことが書かれている書だった。
 その書に美術館のことが書かれていてあの絵の複写、時代のせいか写真ではないそれも見た。その絵は実物に忠実であったが。
 その絵を隅から隅まで観つつだ、ボームは言った。
「お花がね」
「はい、ヤグルマギクがですね」
 絵の右下にあるそれがとだ、ヘミングウェーも応えた。
「ないですね」
「そうよね」
「一つも」
「けれど今はあるわね」
「十輪」
「そう、十輪ね」
「一致しますね」
 ヘミングウェーは鋭い声で言った。
「完全に」
「ええ、行方不明になった人の数よ」
「この大学の中で」
「そう思うと」
 まさにと言うのだった。
「わかるわよね」
「はい、何度も調べて」
「そしてね」
「わかりましたね」
「謎が解けたわ」
 まさにとだ、ボームは断言した。
「後はね」
「行く場所は一つですね」
「そうよ、ダンディに決めるわよ」
 こう言ってだった、ボームは本を閉じて席を立った、ヘミングウェーは彼と同時に同じ動作をした。そうして。
 書を図書館の書士の人に戻してだった、そのうえで。
 二人は美術館に行った、すると目の前にだった。
 絵の美女と悪魔、彼等が立っていた。その彼等が二人に言ってきた。
「気付いたみたいね」
「それでここまで来たな」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ、ボームは彼等に答えた。
「貴方達は絵に取り憑いていた悪霊ね」
「如何にも」
 悪魔が答えた。
「聖と俗の姿だがな」
「その実はどっちでもないわね」
「我等は悪霊だ、絵を棲み処としてだ」
「この大学で人を捕まえていたわね」
「捕えて花に姿を変えてな」
 そのうえでというのだ。
「そしてだ」
「その魂から力を吸い取って私達の力にしていたのよ」
 今度は美女が言ってきた。
「そしてお花が枯れればね」
「捕えられていた人達もね」
「魂が消えてね」
「絵のお花もなくなるわね」
「そうよ、それにしてもよく気付いたわね」
「何でもよく観れば気付くわ」
 これがボームの返答だった。
「科学の基礎よ、何度も観たり調べたり実験するものよ」
「それが科学者だっていうのね」
「そうよ、だからね」
 それでと言うのだった。
「あんた達にも気付いたわ」
「そう、けれどこっちも気付いたわ」
「だからここで花にしてやろう」
「意気は聞いたわ、それで捕まっている人達はあんた達を倒したら元に戻るわね」
 絵の中の花から元の世界に人の姿で戻れるか
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