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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
情報の真価
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う。本命を探るための外堀がこの話題だ。アリアの本命は、別にある。そう確信していた。
「じゃあ、訊くけど──」そこまで彼女は言い終えて、言い淀んでいる。それでも訊くための意を決したのか、その赤紫色の瞳でこちらを見据えてきた。「38代目、でしょ?」


「如月姓──父方は代々から国家公務員の家系らしいわね。お父様も、お祖父様も、曾祖父様も、みんな当時の国家公務員に就いてる。如月一族はエリート一家なのね。まぁ、それだけでも充分なんだけど、面白かったのはこっち。母方は──本家があの安倍大社で、氏は土御門を名乗ってらっしゃるでしょ。安倍大社は安倍晴明公を祭神にしているところで、土御門家は安倍晴明の嫡流。安倍晴明の直系で系譜を見た限りでは、如月彩斗はその38代目になるわ」


「どう、合ってるでしょ?」いつもは上がっている眦を、今ばかりは下げながら、アリアはそう詰問してきた。本人からすれば答え合わせのつもりなのだろうが、こちらからすると取調べに近しかった。むしろ、ここまで調べを付けていたとは、思ってもいなかったのだ。それと同時にやはり、この子の情報収集能力に感心させられてしまった。否、裏を返せば、ここで済んで良かった──と、そう区切りを付けるべきだろうか。「うん、正解」と答えるのが、関の山だった。


「ヘリの中で、陰陽術の話をしてくれたでしょ。それがヒントになったの」
「まぁ、せっかくパートナーになったのなら、隠しても意味は無いしね。それでも……本家のことに関しては、必要最低限の露呈しかしないつもりだよ。如月彩斗が38代目だというのも、現段階ではキンジと君しか知らないわけだから。内密にしておいてくれるかな」


本家、土御門家、安倍晴明公の嫡流──これらは全て同一視すべきものだ。そのなかで世俗に対して完全に隠匿すべきこと、というものは、少なからずある。必要最低限、受動的な露呈というのも、また。その反面、露呈しても構わないようなこともある。主には安倍大社のことだ。
そうして、自分が38代目安倍晴明だということは、必要最低限または受動的な露呈になる。この情報を悪用されると、本家の本質にさえ手が届きかけてしまうのだ。だから、人を、選ぶ。


「君に露呈させた時点で、もう君のことを信用していると言っても過言ではないからね。アリアが何のために自分をパートナーにしたかは知らないけれど、可能な限りは手伝うよ」
「ふふっ、ありがと。優しいのね」
「優しくないよ。普通のことをしているだけ」
「それじゃあ、ただのお人好しね。武偵としてもお人好しでしょ? ほら」


笑いながらアリアがポケットから取り出したのは、4等分に折られた1枚の紙だった。そこには自分が1年次に受けた依頼の総解決数と、学年順位が掲載されている。
『2−A 如月彩斗
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