暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
卑怯卑劣は褒め言葉だねジャックさん!
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遠距離に徹さず、自ら近づき最適の距離を取るところも気に入った。臆病者ではない、殴り甲斐のある面をしてやがる――言葉にせずともその顔が雄弁に語っていた。

 赤い弓兵ほど俺は巧くない。センスもない。足りないものは頭と度胸で補うしかない。それだけの事だった。――ベオウルフやフェルグス相手なら、あの弓兵は単騎でも互角に戦い、或いは勝利してしまえるのかもしれない。それほどに両雄について知悉している。癖を、呼吸を、戦法を。知り抜いている。故に格上だろうが勝機を手繰り寄せられるかもしれない。
 だが少なくとも俺には不可能だ。最大パフォーマンスは足止めが限度。ベオウルフが投影魔剣を破壊できないように牽制の弾丸を放ち続け、間を外し続ける事だけしか出来なかった。しかしそれとてベオウルフが多少の負傷を厭わず、割り切って俺を殺しに来れば十合交えず殺されるだろう。そしてベオウルフは手傷を負うのを恥とはしない。後数秒としない内にその戦法を選択するのが見えていた。

 故に、その前に白い剣銃を過剰強化する。オーバーエッジ形態へ移行させ、それを黒銃剣で射撃を加えながらベオウルフへと腕の振りだけで投げつけた。ベオウルフが投影魔剣を弾いた瞬間にだ。
 足元に投擲されてきたそれを、鈍器じみた魔剣で弾かんとして……ベオウルフは俺の狙いへ直感的に気づき後方に飛び退いた。白剣銃を銃撃する。ただでさえ銃の機構を埋め込まれた短剣を過剰強化しているのだ。そこに銃弾を撃ち込まれれば爆発は避けられない。ベオウルフは回避せしめるも、爆風の煽りを受けてやや体が浮く。更にそこに食らいつかんとした魔剣を、ベオウルフが瞬時に迎撃の刃を振りかざした瞬間、

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 贋作の魔剣を自壊させる。俺は顔を顰めた。

「――これだから勘の鋭い英雄って奴は……」

 完全に詰ませたはずの爆撃だ。布石も充分、俺の宝具が投影による贋作だと初見で見抜ける眼力がなければ、まず俺が宝具を使い捨ての爆弾とする戦術に面くらい、成す術なく倒せてしまえる。勿論俺が遠距離に陣取り、先制攻撃を仕掛けられたなら、だが。
 しかし常識を塗り替えてしまえる英霊は、そんな結末を容易く乗り越えてしまう。ベオウルフは投影魔剣を迎撃しようとする寸前、瞬時に理屈ではなく勘に従い防禦を固めたのだ。フルンディングを楯に、棍棒じみた魔剣を迎撃の矛に。鈍らの魔剣は『壊れた幻想』に直撃した瞬間破損し、代わりに莫大な衝撃波を放って威力の殆どを相殺。フルンディングでの防禦のみで俺の爆撃を殆どダメージなく凌ぎきったのである。
 出鱈目だ。だが彼なら防ぐだろうと確信していた。そして目的は達した。完全に足を止めさせ、防禦で動きを鈍らせ、次の瞬間に叩き込まれる必殺を凌げなくなったのだ。

 勝利の為の布石はこの為に
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