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人理を守れ、エミヤさん!
要観察対象ジャックさん!
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 ――地響きがする。

 お前は不幸だ。
 不運な人だ。
 可哀想だ。
 哀れだ。

 ――以前。俺は傲慢な人だと詰られた。

 弾劾ではない。酒の席の、率直な感想だ。
 場末の酒場だった。
 生憎とその時は酔っていたし、相手も酔っていたから、会話の内容も互いに殆ど覚えていないと思う。
 しかしそのやり取りだけは、なんとなく記憶にこびりついていた。
 まだ冬木から飛び出したばかりの、青二才だった頃だ。俺はぽろりと、世界中から不幸(ケガレ)を拭い去りたいという衝動を口にしていたらしい。
 飲酒は二十歳未満で覚えた。世間の善良な方々は、そんな俺を窘めるのだろうが。残念ながらその酒場の主人は無頓着な性質だったようで。飲みたいならガキでも飲みゃあいい、ただし見つからないでくれよ、おれが捕まるからと笑っていた。

 ――坊やよぉ。お前さんは、傲慢だねぇ……。

 覚えている声は、それだけだ。言われた内容だけが頭にある。



『不幸の限界量。幸福の限界量。そんなものは、人間誰しも同じもんだ』

『戦争に巻き込まれて腕ぇ無くして親亡くして、目一杯不幸を叫ぶガキと。平和な国のスクールで苛められて、親に虐待されて不幸に沈むガキも』

『大富豪のガキに生まれて、何不自由なく甘やかされて育ったガキも。貧しい親ぁ持って自由になるもんが少なくって、そんでも朝昼晩の飯食えて親に愛されてりゃ幸せって感じるのも』

『どっちも同じ不幸で、幸福だ』

『お前さんが何をヨゴレと感じてんのかなんざ知らねえよ。なんでそんなに焦ってんのかもな。けどよ、これからどんだけデケェことするってなっても忘れちゃなんねぇぞ』

『人間が感じる不幸せも、幸せも、感じる感情の最大値はおんなじだ。人間の脳ってのは、度の過ぎた感情持ちゃあぶっ壊れる。残るのは狂人、そいつはなにをしても不幸にも幸福にもなりゃあしねぇ。嗤ってるだけさ』

『人助けしたいんだって? おお、けっこうじゃねえか頑張りな。おれにゃあ真似できねぇし真似しようとも思わねぇ。けどな、アイツの方が可哀想、アイツの方が恵まれてるって風にだけは区別すんなよ。どんだけすげぇ事したって、そんな見方してりゃあお前さん……』

『――人間じゃあ、なくなっちまうぜ』



 地響きがする。

 所詮は酔っぱらいの戯れ言だと、忘れてしまう事は出来なかった。それが人の世界で、人を助けようとする時の心得だと感じたから。自身を戒める真理となると、アルコールの回った頭でも漠然と感じたから。
 俺の主観で、彼の方が可哀想、彼の方が幸せそうと決めつけてはいけない。可哀想だと哀れんだ人は、実は幸せなのかもしれない、満足しているのかもしれない。逆に恵まれている人も、満たされていないかもし
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