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女王への愛
第四章

[8]前話
 オクタヴィアヌスに顔を向けて首を横に振った、オクタヴィアヌスは彼に対して首を縦に振って応えた。
 その彼にカルミオンの様子を調べていた士官が述べた。
「この者はまだ息があります」
「そうか、あれか」
 オクタヴィアヌスは士官の言葉にも頷きここで部屋の片隅を見た、丁度そこから窓の方に白い首のところが平たい蛇が出ていた。
 エジプトコブラ、彼はその蛇を見て言った。
「毒蛇に噛ませてか」
「自害した」
「そうなのですね」
「女王はな、そしてその手配をしたのは」
 オクタヴィアヌスはカルミオンを見て述べた。
「そなたか」
「はい」
 カルミオンはオクタヴィアヌスに答えた、見ればその顔は微笑んでいる。
「私もまた」
「蛇に己を噛ませたか」
「そうしました」
「女王の後を追うか」
「冥界でもあの方と共に」
「そうか、それで満足なのだな」
「大変に」
 弱々しい声だった、そしてその声でオクタヴィアヌスに言うのだった。
「あの方は由緒あるプトレマイオス王家、そしてエジプト王家の女王に相応しい最期を遂げられたのですから」
「そうだな、そしてお主もだな」
「最後まで忠義を全う出来ましたので」
 それでとだ、カルミオンはこと切れようとしたがオクタヴィアヌスはその彼女に最後の問いかけをした。
「して女王の遺言は」
「アントニウス様の隣に葬って欲しいと」
「わかった、そのこと必ず適えよう」
「有り難きお言葉」
 その言葉を聞いてだった、カルミオンは遂にこと切れた。オクタヴィアヌスは彼女の最期を看取ってからアグリッパ達に告げた。
「女王の遺言通りにせよ、そしてこの見事な侍女もだ」
「手厚くですね」
「葬ってやれ、歴史にはこのことを全て書き残すのだ」
「ありのままを包み隠さず」
「戦いがはじまってから今までのことをな」
「そうしてですね」
「この侍女の忠義も全てな、いやこれは」
 オクタヴィアヌスはここで己の言葉を言い換えた、そのうえでこう言った。
「これは愛か」
「女王への侍女の愛」
「それだというのですね」
「そうかも知れない、それ程までのものを感じる。ではその愛を書き残し後世に永遠に伝えるのだ」 
 こう言ってだった、オクタヴィアヌスはカルミオンまでも手厚く葬らせそのうえで歴史に全てを書かせた。
 こうしてカルミオンの名とその愛のことは歴史に残ることになった、アントニウスとクレオパトラだけでなく美貌の女王に最後の最後まで心を捧げた侍女のことも。エジプトの長きに渡って続いた王朝はこの時に終わったがその時にカルミオンもいたのだ。一人の侍女もまた。


女王への愛   完


                   2019・1・9
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