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fate/vacant zero
王都トリスタニアの休日
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 さて、今日は休日ウィルドの日である。



 キュルケは昼前に目を覚ました。

 ぼーっとした顔つきで起き上がり、しばらくそのままベッドの上で座り込んで、何も考えずにぼーっとする。

 これがキュルケの日課であった。どうも低血圧気味なようである。


 しばらくそのまま回らない頭と目で正面右に見える空を眺めていた。



 一羽の小鳥が切り取られた空を横切り、ようやく(なぜ空が見えているのか)と疑問に思う。

 四角かったはずの空の縁ふちを見れば、そこにあったはずの窓枠は無く、真っ黒に煤すすけているのが見てとれた。


 誰の仕業かしら、と起き出した思考回路は的確に、自分の昨夜の所業を思い返させた。



「そうだわ……、ふぁう。いろんな連中が顔を出すから、吹っ飛ばしたんだっけ」



 そりゃ空も見えるわね、と一人ごちて、ベッドから立ち上がり……、化粧台に向かった。


 窓?

 さしあたって問題は無いのでどうでもいい。


 そんなことより、今日はどうやって才人を口説こうか。

 それを考える方が楽しみで仕方がない。


 気のせいか、いつもよりも随分お化粧のノリがよい。

 胸が楽しげに弾んでいるのが、自分でも分かる。


 獲物はしぶとい方が楽しいのだ。


 物騒な例たとえではあるが、キュルケは狩りが大好きなのであった。

 恋の、と頭に接つくが。


 そうこうするうち化粧も整い、自分の部屋の扉を開き、すぐ正面の扉を叩く。

 そうしてキュルケは己の戦闘体勢を整える。


 恋の、と条件付きで。


 誰が出てきても対処できるように手段を練りつつ、顎に片手を沿え、にっこりと微笑む。

 相手次第でどうとでも取れそうな笑みである。



 才人が出てきたら?

 抱きついてキス。これに限る。


 ルイズが出てきたら?

 ……どうしようかしらね?


 そのときは……、そうね、部屋の中にいる才人に流し目。

 あとは、中庭をうろついてたら向こうからアプローチ掛けてくるわね。



 ……キュルケは、才人が純愛好きだなどとは露ほども知らなかったりした。







 考えながら待つこと十数秒。



 出てこない。


 おまけにノックに返事も無い。


 あら? と不思議に思いながら、おもむろにドアを開けようと試みた。

 鍵が掛かっていたが、何の躊躇ためらいもなく『鍵開けアンロック』を掛ける。


 寮内での『鍵開けアンロック』は規則マナー違反?

 バレなければ何事も違反には至らないのだ。

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