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ある晴れた日に
154部分:共に生きその四
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共に生きその四

「じゃああれか。少年が大石で中森が吉良で」
「しかも吉良はヒロインじゃねえしよ」
「御前何処まで馬鹿なんだよ」
「忠臣蔵ねえ」
 しかし忠臣蔵が出て来たところでふと閃いた竹山だった。
「忠臣蔵は歌舞伎でもあるし」
「歌舞伎にも忠臣蔵あるのかよ」
「だから御前は今はもう黙ってろ」
「全然知らないんだから」
 皆いい加減野本は黙らせた。話がややこしくなるだけだからだ。
 そしてそのうえで。皆で竹山に注目するのだった。
「それで竹山よ」
「何かあるのか?演目」
「うん。歌舞伎だったらあるよ」
 こう皆に答える竹山だった。
「それだったらね」
「へえ、どんなの?」
「どんな演目なの?」
「助六だよ」
 明日夢と凛に至っては身を乗り出して問うが変えはそれに答えたのだった。
「それだとどうかな」
「助六!?」
「それってどんなのなの?」
「江戸を舞台にしていてね」
 竹山はそこから説明した。ここは関西なのでどうしても東京には疎くなってしまう。だからである。
「それでね。吉原を舞台にして遊び人、実は敵討ちを果たそうとしている助六が花魁の揚巻を前にして彼の力を得て鎌倉幕府転覆を狙う髭の意休と対峙してって。こんな話だけれど」
「鎌倉幕府!?」
「江戸で!?」
 皆まずそのことに眉を顰めさせた。
「何で鎌倉時代なのに?」
「しかも吉原!?」
「まあその辺りは深く考えないで」
 こう言う竹山だった。
「そこはね。歌舞伎じゃ鎌倉時代や室町時代でも江戸時代の服とかだから」
「そうなの」
「何か凄い世界ね」
「時代設定はどうでもいい世界だから」
 それが歌舞伎なのである。
「その辺りはね。考えなくてもいいからね」
「じゃあ服は江戸時代ね」
「江戸時代の何時頃?」
 こんな話も出て来た。皆意外と設定にこだわっている。
「それでその助六って」
「何時頃の江戸時代なの?」
「時代劇時代」
 ところが竹山は皆のその問いに対して真面目な顔でこう答えたのだった。
「時代はね」
「時代劇時代!?」
「おい、何だよそれって」
「もっと言えば歌舞伎時代かな」
 どちらにしろ訳のわからない時代であった。
「何時頃って言われたら」
「意味わかんねえんだけれどよ」
 春華はそのアーモンド形の吊りあがり気味の目を顰めさせて彼に問うてきた。
「時代劇時代とか歌舞伎時代ってよ」
「それでわかったらすげえぞ」
「全くだよ」
 野茂と坂上も春華に続く。
「時代劇つってもよ」
「江戸時代って二百年もあるのにそれじゃあよ」
「時代劇見てよ」
 しかし竹山は皆のその顰めさせた言葉に対して落ち着いて話すのだった。
「服、一緒じゃない」
「んっ!?そういえば」
「確かに」
 
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