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ある晴れた日に
134部分:妙なる調和その六
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妙なる調和その六

「それだけれどね。いいわよね」
「喜んで聴いてくれるのなら」
 また言う正道だった。
「誰でもいいさ」
「そう。それじゃあ」
「ああ。何か前振りが長くなっちまったけれどな」
 言いながらまたギターを奏でだす。話が少し長くなったうえにその話もあちこちに飛んだりしていたので中断していたので仕切りなおしという形になっていた。
「あらためてはじめるぜ」
「御願いするわ」
 こうして正道はその空も飛べるはずを歌うのだった。千佳はその場に立ったままじっと聴いている。そしてそれが終わった時だった。静かにその両手で拍手をしたのだった。
「よかったってことかな」
「うん」
 微笑んで正道に答えた。拍手をしたまま。
「よかったわ。上手いじゃない」
「上手いのは当たり前さ」64
 ここで己の自信を示してみせる。
「俺だぜ、俺」
「やっぱりスピッツ程じゃないけれど」
「ああ、そうか」
 それは少し憮然とした苦笑いになって応えるしかなかった。
「それはかよ」
「けれどよかったわ」
 それでもだというのだった。微笑んでさえみせる千佳だった。
「上手いわよ、本当に」
「上手いだけなのはな。ちょっとな」
「駄目だっていうの?」
「感じたの。それだけか?」
 拍手はもう止めていた千佳の顔を見上げて問うたのだった。
「他には感じなかったか?今の俺の空も飛べるはず」
「いい曲だったし」
「それだけか!?」
 何故か問うその声の真剣さが増してきていた。顔もやけに真面目なものになっている。まるでそこに彼の核心があるかのように。
「それだけか!?さっきの俺が歌ったのにあったのは」
「心に滲みるわ」
「スピッツの曲だからさ」
「それもあるわ」
 ここで千佳の言葉が微妙に変わってきていた。
「それに」
「それに!?」
 さらに真剣な顔で千佳に問うのだった。
「まだあるのか!?何か」
「音橋君、スピッツ好きよね」
「ああ」
 その真剣そのものの顔で頷く正道だった。
「そうさ。そこにあるのもな」
「スピッツの心よね」
「それがあるから好きなんだよ」
 正道は断言になっていた。
「だから。俺もこの曲歌うんだけどな」
「わかるわ。感じたわ」
「感じてくれたか」
「ええ。音橋君の心」
「それだよ」
 今の千佳の言葉に会心の言葉で返したのだった。
「それなんだよ。それ、あるんだな」
「わかるわ。音橋君がどれだけこの歌もスピッツも音楽も好きかってね」
「好きじゃなきゃ歌わないさ」
 はっきりと述べた正道だった。
「絶対にな」
「音楽が何よりも好きなのね」
「生きがいって言葉は嘘じゃないさ」
 普段はこうしたことを言う際は自信たっぷりだが今回は違っていた。その真剣そのものの
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