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猿顔
第六章

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「ゴリラをよく観てくれよ、毎日一緒にいて俺も色々学べるし」
「楽しいか」
「それで優しいきもちになれるんだな」
「ああ、思えばな」
 日吉はよくこうも言った。
「俺は名前も外見もだろ」
「猿か」
「どれも猿だからか」
「それでか」
「そこからも思うんだな」
「ああ、ゴリラも猿だろ」
 サル科の生きものだからだというのだ。
「そう思うとな」
「猿は猿でか」
「縁があった」
「ああ、運命だったのかもな」
 ゴリラの飼育員になりたいと思いそれが適ったことはというのだ。
「今の俺があるのは」
「そうなんだな」
「じゃあこれからもか」
「御前はゴリラの飼育員でいるか」
「その世話をするか」
「そうしていくな、本当にゴリラはな」
 まさにと言うのだった。
「それじゃあな」
「よし、じゃあな」
「ゴリラとか」
「これからも一緒に暮らしていくんだな」
「ああ、世話をしてな」
 そうしてとだ、日吉は笑って話した。名前と外見、そして動物園でのこともっと言えば大学で生物学部を選んだこともだった。
 彼はだ、言うのだった。
「生きていくよ」
「そうか、しかし大学もな」
「御前は生物学部選んだけれどな」
「それもか」
「運命だったんだな」
「猿に限らず動物が好きなんだ」
 日吉は元々そうだったというのだ。
「それでな」
「生物学部も選んだ」
「だから生物の知識も備えて」
「学芸員の資格もか」
「それが取れる大学でもあって」
「俺の今があるな、全部運命だったんだな」
 日吉はその全てを受け入れていた、己の運命を。そうしてゴリラ達の世話をして働いていて。
 動物園でゴリラのコーナーにいる時に観ている子供達によく言われた。
「あのお兄ちゃんもお猿さんそっくりだね」
「ゴリラのところにお猿さんがいるよ」
「何か面白いね」
「そうだね」
 親や先生はそう言う子供達を叱る、だが彼は子供達のその言葉を笑顔で頷いていた。そうしてゴリラの世話をして彼等の優しさに触れるのだった。


猿顔   完


                2018・12・15
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