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徒然草
8部分:八.世の人の

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八.世の人の

八.世の人の
 男子を狂わせるもので一番厄介で勝つ大きなものといえば何と言っても色欲でしてこれが一番激しいです。これに惑わされ狂ってしまう男心は節操がなく実に身につまさるものです。
 香りなどというものはまやかしでしかなく服についたお香と同じものだとわかっていましてもあのたまらないまでに素晴らしい香りにはときめかずにはいられないものです。空を飛ぶ術まで身に着けたあの久米仙人までもが洗濯をしている女の子のふくらはぎを見ただけで仙人からただの助平なお爺さんになってしまったというお話もあります。二の腕やふくらはぎがきめ細かでいて肉付きがよいということは女の子の生来の可愛らしさですから変に納得してしまいます。かといっても溺れるのはよくはありませんが。どうしても納得できるものが私にもあります。それは認める次第です。人というものはやはり心がありそれは異性に向いてしまうもの。男というものはとりわけそうです。美しい女の人や可愛らしい女の人にはついつい心を奪われてそうしてその香りにさえ心を惑わされてしまいます。しかしこれが実に厄介なものでその心を狂わせる最も厄介なものです。だからこそ今ここに書き留めて戒めとしたいものですが果たしてそれが通じるかどうかといいますと。やはり難しいのではないかと思います。その難しさをどうにかしないと駄目なのですけれど。それでもどうにもならないものがこの色欲というものであります。心、とりわけ想うものでそこに欲が混ざればこれ程御するのに苦労するものはないのであります。


世の人の   完


                  2009・4・23

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