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徒然草
191部分:百九十一.夜に入りて

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百九十一.夜に入りて

百九十一.夜に入りて
 夜になると暗くてよく見えないなどと言っている人は馬鹿に違いありません。様々なものの煌きや飾り、色合いといったものは夜だからこそ輝くのです。昼には単純で地味な姿でも問題はありません。ですが夜にはきらきらと華やかな服装がよく似合います。人の容姿も夜の灯りの中で一層美しくなります。話す声も暗闇の中から聞こえればその思いやりが身に染みてきます。香りや楽器の音も夜になると際立ってくるものであります。昼よりも夜なのであります。
 どちらでもいい夜更けに行き交う人が清潔な姿をしているのはこの上もありません。若い人は何時誰に見られているのかわからないのですから特にくつろいでいるそうした時などには普段着と晴れ着の区別なく身だしなみには気をつけましょう。美男子が日が暮れてから髪を整えて夜更けに自分の家を抜け出してこっそりと鏡の前で化粧をなおすのは実にいいものであります。そのよさがわからないというのは物事がわかっていないということであります。っそれこそ馬鹿なのであります。
 そうした夜の素晴らしさをわかるというのも大事なことです。世界は昼だけではありません。夜もあるのですから。


夜に入りて   完


                2009・11・21

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