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約束と予言
第四章

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「そうなってしまう」
「そうですね」
「それもだ、あの者はそこまで知らないが」 
 ゼウスは予言を司る神であるアポロンから言われたことをヘラに話した。
「敵に戦車で追われてな」
「そうしてですか」
「背を串刺しにされて殺される」
「それがあの者の死に方ですか」
「アルゴー号の遠征にまで参加した勇者がだ」
 ゼウスはこのことを苦々しい顔で話した。
「そうした無残な死を遂げるのだ」
「そうなってしまうのですね」
「全く以て嫌なことだ、しかしだ」
「貴方としましては」
「あの者には誇りある死を与えたい」
 ゼウスは勇者である彼をおもんばかって言った。
「だからアポロンに言った、私の我儘を一つ聞いて欲しいとな」
「そしてその我儘によってですね」
「彼に誇りを与えたい、そしてだ」
「その後はですね」
「我が兄弟ハーデスに任せることにした」
 こうヘラに話した。
「そしてこのことはな」
「ハーデス殿にもですね」
「既に話した。ではな」
「これからですね」
「あの者に勇者に相応しい最後を与える」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
「いいな」
「私もです」
 ヘラは夫の言葉に毅然として答えた。
「やはりです」
「アムピアラオスにはだな」
「勇者に相応しい最期が与えられるべきです」
「そう考えるな」
「ですから」
 それでと言うのだった。
「その様に」
「うむ、ではな」
「今からお願いします」
 こう夫であるオリンポスの主神に言った、そしてだった。
 ヘラもそれをよしとした、そのうえで共にテーバイの戦いをオリンポスの山の頂から見守った。
 戦いは予言通りに進みアムピアラオスは敵が操る戦車に追われていた、戦車に徒歩の時に襲われてはどうしようもなった。 
 為す術もなく追い詰められていった、そうして。
 遂に背中を槍で刺し貫かれようとする時だ、ゼウスは右手を掲げた。
 すすとアムピアラオスの足元の大地が左右に分かれ彼はその下に落ちていった。彼が落ちると大地は元に戻った。
 そいこまで見届けてだ、ゼウスはまた言った。
「これでいい」
「はい、あの者にとってですね」
「最も相応しい最期だ」
「むざむざ背を貫かれて死ぬよりは」
「これでいい、そしてだが」
「彼の妻と彼を唆した者はですね」
「私は何もせずとも報いを受ける」
 ゼウスは顔を顰めさせて言った。
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