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徒然草
190部分:百九十.妻といふもの

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百九十.妻といふもの

                百九十.妻といふもの
 男は妻を持ってはいけません。何時でも一人住まいです、と聞けば清々しくなります。誰かの婿になっただの何とかという女を連れ込んで一緒に住んでいるという話を聞けばもうそれで酷く軽蔑の対象になります。恋の病気を患っていて大したことのない女に夢中になっているのだろと思えばその人の品格も下がってしまいます。万が一それが美女だったとしても猫可愛がりをして神棚にでも祀っているのだろうと思ってしまうものであります。ましてや家を切り盛りする女は情なく見えて仕方がありません。子供ができてしまって可愛がる姿を想像すればうんざりとなってしまいます。男が死んでから女が尼になって老け込みますと男の亡くなった後まで恥を晒す羽目になってしまいます。
 どんな女でも朝から晩まで一緒にいればもう飽きて気に入らなくなってしまい嫌になってしまうでしょう。女の方にしてもどっちつかずの状態で可哀想であります。ですから男は女と別居しまして時々通うのがいいのであります。何時までも心のときめきが続くでしょう。女のところに男が不意にやって来て泊まったりしたら不思議な感じがするものでしょう。これは普段会わないからこそ新鮮に思えるからです。その方が付き合いにもかえっていいものなのであります。


妻といふもの   完


                2009・11・20

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