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人理を守れ、エミヤさん!
鉄の心の士郎くん!
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そして神話の戦いに呆然とする海賊達。

 士郎への矢はマシュが。アイリスフィールは地面に叩きつけられていたアルトリアが。ネロは駆けつけたアタランテが引っ掴み強引に回避させ、海賊への矢はクー・フーリンが弾き飛ばす。
 それで充分。喚び出すはケリュネイアの牝鹿である。その背に着地したアルケイデスは巧みに牝鹿を操り疾走させ、クー・フーリンに匹敵する速力を発揮する牝鹿の背から矢継ぎ早に矢を放ち始めた。

「クソッタレがぁ!」

 悪罵がクー・フーリンの口を衝いて出る。狙いは徹底していた。無力な者をこそ狙う外道の戦術。ネロ、アイリスフィール、士郎、そして普通の人間である海賊。それを護るのに釘付けにされ、唯一自由となったオルタではケリュネイアの牝鹿を捉えきれない。そしてオルタがクー・フーリンと守りの役を代わろうとするだけの間が空かない。

 アルケイデスは矢を膨大な魔力に物を言わせ無理矢理に作り出している。如何なる原理なのか、スキルなのか。矢が尽きる気配はなく――翻ってカルデアの魔力は限界を見ようとしていた。
 連続された宝具の解放。後はマスターである士郎やネロの負担になる。だがネロはともかく、今の士郎に負担を掛ける訳にはいかない。このままでは、まずい。

「――削り殺してやろう」

 悪意を以て嗤う復讐者が止まらない。――敗北の予感に襲われる。



 故にこそ。



 敗北の運命を覆す者が、この場にはいたのだと思い出す。

「  」

 マシュがハッとする。しかし何を思ったのか、すぐに平静を取り繕う。だがその瞳に喜色が浮かぶのを隠しきれなかった。
 少女は躊躇わなかった。瞬時に守りを破棄してクー・フーリンに駆け寄る。アルケイデスは訝しみながらも矢を放ち、クー・フーリンはマシュの動きだけで察して笑う。
 そして槍兵はアルケイデスへ向けて馳せた。マシュがクー・フーリンの代役を勤める。しかし士郎の護りが空いた……その意味を復讐者が汲み取れなかったのは、アルケイデスの理解を超えていたから。

 無慈悲な矢は、顕現した紅色の楯によって阻まれる。

「何――!」

 士郎が目を開き、息も絶え絶えながらも上体を起こして手を掲げていた。
 ――こんな短時間で意識が覚醒しただと、あの毒を受けてか!?

「侮ったな、外道!」

 理解を超えた現象ゆえに、隙が生じた。クー・フーリンは吼え、魔槍を一閃する。アルケイデスは反応するも間に合わず、その右腕が宙を舞う。
 アルケイデスは侮っていたのではない。だが、どうして想像できる。身を以て思い知っている激痛の海を渡り、意識を取り戻す人間がいる等と。
 あらゆる加護、あらゆる後押し、そんなものに依存しない鉄の心。あらゆる心的負荷に堪え忍び精神死から蘇生する人間の精
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