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徒然草
18部分:十八.人は、己

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十八.人は、己

十八.人は、己
 人はなくてもよいようなものを持ったりすることなく、また欲張ったりすることも止めてそのうえで金や宝石といったものを持たず人から羨ましがられることを欲したりしないことがもっとも偉いのです。今日の今日まで人格の優れた方が長者になられたということなぞおとぎ話でしか聞いたことのないことです。
 かつての中国に許由という人がいました。この人は身の回りの品がなかったので水は自分の手ですくって飲んでいました。それを見た人が柄杓を買ってあげて彼に取ってもらうように木の枝にかけおくというおせっかいをしました。すると柄杓は風に吹かれてからからと音を立てましたので許由はそれを五月蝿いと言って投げ捨ててしまいました。そうしてまた手ですくって水を飲んだそうです。きっとこの人は清々して得体の知れない喜びを身体の芯から感じたのでしょう。また孫晨さんという人は寒い冬の中でも布団がなかったので藁にくるまって寝て朝になるとその藁を片付けて起きるという生活でした。
 昔の中国の人はこうしたことを伝説に値すると思ったからこそ本に書き残したのでしょう。今の日本人だとこうしたお話は素通りして語り伝えたりはしないでしょう。それが残念といえば残念で仕方ありません。


人は、己   完


                  2009・5・3

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