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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
滴る氷柱4
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と恨めし気に呻いていた。

 世の中、一人の賢人より行動力ある凡人の方が案外世界を変えられるのである。

「……流石に『接続』したときのことは言えないからな」

 呻きに混じって何か違う言葉が聞こえたが、その時のエデンには明瞭に聞き取ることが出来なかった。



 ともかく、勉強は順調。そして鉄脈学の実践授業も順調だった。

「ハァァッ!!」
「……阻め、エッジ」

 疾走と共に接近する八千夜を感知したエイジが、表情一つ変えずに地面から生える巨大な氷柱を生成する。大きさにして3m弱、氷柱と呼ぶのを躊躇われるほど正確な三角錐がエイジと八千夜の間に反り立った。
 瞬間、八千夜の爪が煌めき、氷が中ほどからバラバラに分断される。

 彼女の爪の切れ味は当人曰く日本刀並、それが複数生えそろって獣の力で振るわれている。ただの氷では野菜のように切り裂かれる。しかしエイジにとってそれは単なる目くらましだ。瞬間、八千夜のいる足場がもろともめくれ上がるように巨大な氷の崖となって無理やり彼女を後方に追いやろうとする。

「ですが、甘いッ!!」

 彼女の判断は早かった。すぐさま足場を切り裂いてそこに足をかけ、そのまま跳躍して弾丸のような速度でエイジに接近する。エイジはそれを氷の塊を出現させてぶつけることで妨害しようとするが、空中で官能的なまでの美しさで体を捻る八千夜の爪が次々にそれを切り裂く。

 彼女の身体能力強化は、物理的な強化とは違う。彼女が獣化することによって、根本的に彼女の起こす行動に付随する物理法則が彼女に優位になっている。例えば獣の爪は伸縮可能で伸ばせば1m近くになるし、空中での挙動も普通の人間ならそもそも物理的に不可能そうな慣性が時々垣間見える。爪の切れ味も、本人は刀並みと言ってはいるが、実際の刀より鋭いのではないかとエデンは思っている。

 エイジはこれまでも何度も八千夜と模擬戦をしているのだが、毎度負けていた。というのも、エデンを守る事を念頭に置きすぎて自分がやられる状況になったり、逆にエデンを集中的に狙われて防戦一方でネタ切れを起こしてしまっていた。
 八千夜の野生化した勘はどうやら場に存在する仮想血液(アストラルブラッド)の濃淡まで嗅ぎつけているらしく、そもそも接近戦に向かないエイジでは動きを先読みされて駆け引きに負けるのだ。

 エデンはそれを見守るばかりだ。それは八千夜のパートナーであるあざねも同じである。
 魔女は基本的に、パートナーが戦っているのを見ていることしか出来ない。
 軍属にもなるとシールドを抱えて魔鉄銃を発砲したりするそうだが、学生の身でそんなことをすることも出来ない。応用の中にはエデンの助力が必要となるものもあるが、まだ習っていなかった。よってエデンに出来るのは、エイジの邪魔
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