暁 〜小説投稿サイト〜
【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
滴る氷柱2
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 
 エデンは歴史の授業があまり好きではない。
 過去より今を見つめるのが生きるということだと思うからだ。
 もちろん方便だ。実際には鉄歴なる年の数え方が出てきて面倒くさいからだ。

(あーもー、鉄歴のまま暦進めればよかったのに、なんでこの区切りの悪いところで魔鉄歴に切り替えるのよ。年号でいいじゃない年号で)

 エデンは内心で盛大に文句を垂れ、黒板に刻まれた先人の輝かしい歴史に筋違いな恨みを抱きながらノートに書き写す。

 エデンに限らず日本皇国民は、鉄歴や魔鉄歴という暦をそんなに重視していない。
 なぜなら国家の主たる天孫が代々更新してきた「年号」があるから、そちらを使うのだ。そのためこういった海外の暦にはそれほど馴染みがない。一時期日本皇国がラバルナ帝国の支配下に置かれた際には鉄歴の普及が図られたそうだが、少なくともエデンのように比較的田舎な土地に住んでいる人間にまで浸透することはなく年号と歴は併用され、そしてラバルナ帝国滅亡によって中途半端な浸透に終わった。

(アンタもアンタで何で滅んでんのよ。あんたのせいで近代史すごい面倒くさくなってんのよ責任とりなさいよ!?)

 とうとう魔鉄文明開祖ともいえるラバルナ皇帝に内心で喧嘩を売り始めたエデンは、教科書に載るラバルナ皇帝の額に肉の文字を書き込み、まだ満足できないと変な手足を生やしてペロペロキャンディーを持たせたりふきだしを作って「キャンプファイヤー!」と書き込んだり盛大に落書きを開始した。
 が、遊び過ぎてノートが進んでいないことに思い至り、「今回はこのくらいにしといてやるわ」と内心で捨て台詞を吐いて再び授業に集中する。

「――とまぁ、ユーラシア主要国家は最後まで超国家化の流れに反発してた訳だが、結局メリットが大きいということで話に乗り、ヴァンゼクス連合が出来上がった。ただし、主要六か国の仲はお世辞にもよろしくない。もともと音頭を取ってるプザイとマギに意見対立が多く、他四か国は国力に劣るからそれに振り回されがちで溜まる不満も多い。ある意味では超国家連合の構成そのものに失敗した国と言える」
「議会は毎度全会一致が取れず、超国家なのに人種も文化圏もバラバラ。まぁマギを取り込まなきゃ遅かれ早かれ戦争になったから取り込んだのはいいものの、逆に獅子身中の虫を抱えることになったってトコかな。政治ってどっち選んでも苦しいって時があるから大変だねぇ」

 リック先生とルーシャ先生は授業の説明でも妙に息が合っている。
 それにしても他国、かつ一番攻め込んでくる可能性の高い国とはいえ結構ボロクソな言いようである。実際のところ、ヴァンゼクス連合参加国で強力な力を持っている国家は多くが元は独裁国家か王国らしい。しかも永久凍土や砂漠などの空白地帯が多く、物理的な繋がりの薄い国も数多い
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ