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徒然草
151部分:百五十一.或人の云はく

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百五十一.或人の云はく

               百五十一.或人の云はく
 ある人が言っていたことですが人間は五十になってもやっている芸が上達しなかったならばもうそんな芸は捨ててしまうべきだというのです。何故といいますとその歳になってしまえば例え頑張っていても結局練習する未来もありません。それに周りにつきましてもそれはお年寄りのすることなので誰も笑えません。何しろ人間五十年です。それでやっているのでありますから。世の人々と交わっていることもこれまた慎みがなくみっともないものであります。身体が弱ってよぼよぼになってしまったら何もかもを捨ててしまってそれで放心して空でも見ているのに限ります。その方が見た目にも老人らしくてまことに理想的であります。世俗にまみれてそうやって一生を終えていくのはあまりよくできた人のすることではありません。どうしても何かを知りたいと思ったならばその時は人に師事して質問紙おおよその概要をわかったうえでそのうえでわからないことがわかったのを喜ぶ程度で止めておくのが丁度いいのです。それでも実際のところはもうはじめから何も知ろうとしないで無関心でいることが最もいいことなのです。そう思うのでありますがこのことに関してましてもそれを実際にやっている人は少ないです。そんなに難しく考えることはありませんし難しい行動でもないというのにです。何もかも難しく考えず諦めることも肝心なのです。諦めてしまえばそれで生きるのがかなり楽になり達観したものにもなります。


或人の云はく   完


                2009・10・12

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