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麗しのヴァンパイア
第百十三話

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                第百十三話  未完の名作
 博士は小田切君にさらに話した。
「未完の大作という言葉があるな」
「ですね、文学には」
「そして未完の名作という言葉もあるな」
「そうですよね」
「しかしじゃ、わしが思うにじゃ」
 博士は自分でコーヒーを淹れつつ小田切君に話す。
「それは大作でも名作でもない」
「完結させないとですか」
「作者が死んで未完となるのは仕方がない」
 この場合はというのだ。
「人は必ず死ぬからのう」
「博士は違いますけれどね」
「わしは実は人ではないからのう」
「ビッグバンの頃から生きておられた」
 地球どころか宇宙誕生の頃からだ。
「そりゃ人間じゃないですね」
「様々な宇宙の星達を巡って今は地球におる」
「大体一万年位前からですね」
「そうじゃ、しかしわしは置いておいてじゃ」
 人間ではない自分自身はというのだ。
「あえて言うがな」
「はい、人間はですね」
「必ず死ぬ」
 このことは絶対のことである、人間だけでなく普通の生ある存在はその最期は必ず来る。それが死なのだ。
「そうなる、だからじゃ」
「作者の人が死んでの未完はですね」
「これは仕方がない」
 こう言うのだった。
「それはな、しかしな」
「放り出しての未完は」
「創作者として失格じゃ」
 博士は自分の考えを述べた。
「それはな、それで未完ならな」
「大作でも名作でもですか」
「ない」
 博士は断言した。
「人生も未完の人生はあるか」
「それはないですね」
「そうじゃな、だから作品はな」
「未完だとですか」
「未完は未完でじゃ」
 それに過ぎず、というのだ。
「どれだけ面白くても芸術性が高く感動してもな」
「大作でも名作でもないですか」
「そうなのじゃ。だから作品を書いたなら」
 それをはじめたならというのだ。
「作者は完結させねばならん」
「それが作者の義務で」
「大作も名作も出来るのじゃ」
 完結させてこそ、というのだ。博士は小田切君に話した。


第百十三話   完


               2018・12・12
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