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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの戦訓 2/5
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、さっぱりわかんないんだけど』

 凛が呆れると、士郎は苦笑した。俺もさっぱり分からんと。ジョッキを呷って麦酒を干す。からん、と氷の鳴る音に目を細めた。

『そういえばさ、イリヤスフィールから聞いたんだけど』
『ん? 連絡取り合ってるのか』
『取ってるに決まってるじゃない。冬木に連絡してないの、アンタぐらいなもんよ。っと、話が逸れかけたわね。――イリヤスフィールが最近気づいたみたいだけど、自分達に聖杯の影響があるんだってさ』
『イリヤが? そりゃあってもおかしくないんじゃないか。聖杯(イリヤ)なら』
『イリヤスフィールだけじゃないわよ。私も、桜も、藤村先生も。アンタも。たぶん影響受けてる奴はもっと多いんじゃないか、だって』
『……? 原因は分かってるのか』
『さあね。年単位で調べなきゃ分かんないぐらい根深くて、厄介な呪いらしいし……気長に調べるらしいわ。気長に、ね』
『……』

 事情に通じていながら、そこに含められた因果を察せない暗愚はいまい。士郎は己の手元のグラスに視線を落とす。

『士郎。アイツ――寿命が近いわよ』

 士郎は押し黙った。凛は麦色の液体をグラスの中で揺らめかせ、小さく囁く。
 会わなかったら後悔するわよ、と。数瞬の間を空けて、士郎は分かっていると答える。ちゃんと分かってる――そう繰り返した。
 凛は嘆息する。士郎の目に、強い光があったからだ。

『考えはあるみたいね。何をする気?』
『……なんだよそれ。俺が何かを考えてるのはお見通しって言い種は』
『だって知ってるもの。アンタが時計塔で、色々と聞き込んでるの。足を使ってあっちこっち回ってたのってさ、元々イリヤスフィールをなんとかしたいって思っていたからなんじゃないの? そして、探し物を見つけた。だから落ち着いてる。違う?』
『……さあ、な』

 曖昧に暈し、その話はこれっきりだった。士郎はそれから二ヶ月ほどロンドンに滞在する。その間に、凛と士郎は性差を超えた友人となった。
 助手として第二魔法の研究に付き合わされた事もある。その最中の事だ、実家に置いておく事も出来なかった呪いのアイテムを、うっかり封印解除してしまった凛は、二十歳なのに魔法少女と化してしまう。

「ぶふぉ」

 アーチャーが噴き出した。ふるふると体を震えさせ、必死に笑いを堪えている

 しかし士郎は笑いを堪える素振りすらなく、指を指して爆笑した。

『忘れろぉ!』

 案の定八極拳でボコられ気絶した士郎は、凛にテムズ川へ投げ落とされた。
 真剣に危なかったと激怒した士郎は復讐に燃える。リン・トオサカ魔法少女化の案件を時計塔に吹聴し、知り合って以来、矢鱈と好意的なルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトに面白おかしく話し、噂を積極的に広めに広めた。
 
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