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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの足跡(前)
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ば私に例のチーズを進呈したまえ。それを口止め料にしてあげよう」
「分かりました」

 この件に関しては全面降伏である。多少の労は惜しまない。
 しかし思うのだ。プライバシーを破壊されるのだから、大目に見てくれてもいいのではないか、と。いやまあ、大目に見たから好物であるチーズで勘弁してくれるのだろうが。










 二時間後。所変わってシミュレーター・ルームである。

 此処に士郎の記憶映像を再現し、四方八方の空間に記憶の中の世界を具現化するらしい。
 作業早すぎませんかと士郎は思ったが、カルデアの設備と魔術王、万能の人が揃えば人間一人の人生を丸裸にするのに、本来は十分と掛からないらしい。寧ろ二時間も掛かった事の方が驚嘆に値するとか。

「先輩の過去……を、覗き見、ですか……な、なんだかイケナイ事をしている感じがします……」

 マシュ、そう言うのなら、そのワクワクした表情を隠してから言ってくれと、士郎の目は言っていた。そして深々と嘆息し、ひらひらと手を振ってシミュレーター・ルームを後にする。
 シロウ、どこへ? そう問うアルトリアに、士郎は肩を竦めた。何が楽しくて自分の記憶を自分で見るんだ、五時間も、と。

「五時間っ?! そんなにあるの!?」
「あー、イリヤちゃんだっけ? 士郎くんの人生矢鱈と濃くてさ、これ以上短く出来なかったんだよ」

 イリヤの叫びに、ダ・ヴィンチは苦笑して答えた。あ、トイレ休憩は二時間半後に入れるよと、半笑いで言った。
 そして立ち去る士郎の背中にダ・ヴィンチは声を掛ける。「この二時間と少しのウチに、アグラヴェインが彼女達の世界に関する事を聞き出して資料に纏めてるらしいから、暇なら目を通しといてね」と。士郎は後ろ手に了解と告げ、そのまま姿が見えなくなる。扉がスライドして閉まった。

「さて。今から五時間、私達は士郎くんの記憶の中に入る。と言っても立体映像なんだけどね。だから何も干渉はされないし、出来ない。そこは弁えておくように。それと! 割と凄い事になってるから、気分悪くなったら何時でも言うこと! 勿論映像は大分マイルドにしてるけどね」
「えぇ……? そんなふうに言われるお兄ちゃんの今までって……」
「……」

 現時点でドン引きするイリヤと、深刻な顔をする美遊。観客――と言うと不謹慎だが、この場にはイリヤ、美遊、アイリスフィールをはじめとして、桜、アルトリア、オルタ、クー・フーリンに百貌の一体、アグラヴェインにネロ、アタランテ、マシュ、ダ・ヴィンチがいる。
 英霊エミヤも、隅の方で腕組みをして立っていた。特異点Fにて一度、垣間見たとはいえ――気になるのだろう。平行世界の自分が辿った道が。切嗣は本来、こんな所に来たくもなかったのだろうが、アイリスフィール
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