暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
撹乱する意思の蠢き(下)
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
と、此処には来ない」
「何故?!」
「敵に絡まれてな。そちらへの対処に回した。何、案ずることはない。こんなもの、俺が来るだけで充分というものだ」

 ――嘘の気配はない。勘はそう言うも、やはり違和感はある。空に展開される熾烈なドッグファイトは、英雄王と――バーサーカー、そして召喚した魔神の背に立つ魔術王によるもの。そちらに手を割かれているのかと歯噛みする。
 しかしこの男はなんと言ったのか。この大海魔を相手に、自分が来るだけで良いと? それはつまりセイバーと、今も戦車の雷撃を大海魔に浴びせたライダーだけで対処が叶うという事か。

 男は剣弾を放つ。真名はカラドボルグ、ケルト・アルスターサイクルの英雄、フェルグス・マック・ロイの螺旋の剣。
 それは大海魔の肉塊を易々と貫き、中枢に至るや再び炸裂させた。巻き起こる甚大な爆発。内部の肉塊が爆ぜ、内部にいる黒化英霊の姿が垣間見えた。

「其処か」

 なんという――セイバーは驚嘆した。破壊力の凄まじさはAランク宝具に匹敵する。炸裂させた分を計上すれば、A+ランクにも届くだろう。大海魔本体と環境への宝具の相性と、使い方も良い。貫通弾は周辺に余計な被害を及ぼさず、そのままでは遠くまで飛来するそれを爆発させる事で最大効果を発揮したのだ。
 それによって召喚の核となっている黒化英霊の位置を把握した。次に放てば決して外さないだろう。再び同一の宝具を右手に顕し、弦につがえる。セイバーは目を見開いた。宝具の投影――言うまでもなく異能の業である。
 
 しかし大海魔は本能的に危険を察知したのだろうか、無数の触手を震わせ衛宮士郎に襲いかかる。完全な召喚が果たされる前に黒化英霊を屠られれば、存分に食欲を満たす事は叶わないと。――或いは大海魔すら、聖杯の意思の支配下にあるのか。セイバーはすぐさま衛宮士郎の傍に駆け寄ると、その触手を切り払う。
 だがそれだけで諦める大海魔ではない。更に倍する触手を放ち、是が非でも自らの脅威を食らわんとした。

 雄々しい雄叫びが雷鳴を伴って轟く。二頭の雷牛に牽かれた戦車が、セイバーだけでは払いきれない超重の肉の鞭を焼き払ったのだ。

「乗れッ、ランサーのマスターよ!」

 つぶさに戦局を見据え、故に士郎の放った剣弾の効果が必殺になると確信したのだろう。士郎を回収し空へ逃れ、戦車の機動力で大海魔の手を避けんとしているのだ。
 本来ならば敵である士郎を戦車に乗せるのは愚の骨頂なれど、今はそのような事を言っている場合ではない。英霊として断じて大海魔の存在を許しておけぬ。その思いはライダーも同じだった。
 
 唐突に言われ、しかし萎縮して物怖じする男でもない。士郎は一切躊躇わずに戦車に飛び乗ると、宝具の投影を目の当たりにして固まっていたウェイバーに笑い掛ける。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ