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人理を守れ、エミヤさん!
王様に物申す士郎くん!
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て行くべきなのに。子供を言いくるめるのなんて簡単なのに、俺はそれをしないで強がるように口角を持ち上げていた。

「――分かった。ただし桜、お前を連れて行く代わりに一つ、条件がある」
「……なに? わたし、言うこときくよ」

 現在進行形で我儘を言っているのに、言うことは聞くときたか。やれやれと苦笑して、少しだけ気になっていた部分を訂正する。

「俺の事は『おじさん』じゃなくて、士郎さんと呼べ。『お兄さん』との約束だ」
「……? うん、わかった。士郎さん――これでいい?」
「ああ」

 俺の台詞に、マシュも堪えきれなくなって噴き出した。ロマニはロマニで、さっきから笑いすぎだ。後が酷いぞアーキマン……。お前も俺に近い歳だろうが……。
 この年頃の子供には、俺ももう、いい歳したおっさんである事に変わりはないのだろうが、まだ三十路手前なのだから『お兄さん』と呼んでほしい男心である。







 魔術王の魔術によって、神殿化していたホテルを出る。その際に神殿化を解除させておくのも忘れない。もう此処に戻って来る事はないから必要がなくなったのだ。
 酷く非合理的な事をしている自覚はあった。馬鹿げていると自分を罵りたくもある。しかし繋いだこの小さな手を、離してはいけないとも強烈に感じていた。

「マシュ」
「はい」

 第二特異点で能力を覚醒させたマシュに、全幅の信頼を置いていた。
 こと守護の一点に於いて、俺の知る全てよりも優れていると、貴い守りなのだと言語を超えた領域で理解していた。故にまず第一に恃むのはマシュである。

「もしもの時は、桜を頼む――なんて軽い事は言わないぞ。桜と俺を、二人とも守ってくれ」
「――はい」

 力強く、嬉しそうに微笑むマシュに衒いも、憂いもない。年下の少女に、守ってくれなんて台詞を投げるのは情けないが、そんな下らない矜持を無視出来る相棒としての信頼がある。
 アルトリアにしたって、クー・フーリンにしたって、切嗣やアーチャーの野郎にしたって、桁外れの信頼を置いている。全員が最高の仲間だ。ああ、もちろんネロやアタランテだってそうだ。ダ・ヴィンチにもどれだけ助けられているか。アグラヴェインは司令塔として無二の信頼が置けるし、百貌なんて戦闘を支える最重要の戦力である。だからまあ――

「あれ、僕は?」
「五月蝿い」

 ――だからまあ、今回もきっと上手くやれると希望を抱く。希望を繋ぐ旅路、それなくして戦い抜ける道理もない。
 いや道理も糞もなく、単純に希望のない戦いなど御免被る。世界には救う価値もないクソッタレが掃いて捨てるほど在るが、それでも人理を救う戦いは、この小さな手を光差す未来に届かせるものなのだ。

 故に、桜。本当ならフライングも良いところだが、先に過
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