なんくるないさ士郎くん!
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でロマニはアイリスフィール達に向けて言った。
「やあセイバーと、そのマスターのフロイライン。私に戦闘の意思はない、どうか剣を下ろしてくれないかな?」
「……俺からも頼む。今は各陣営で徒に事を荒立てる時期じゃない」
「ランサーのマスター……」
アルトリアが思案げに俺を見て、次いでアイリスフィールを窺った。冬の聖女の生き写しである女性は、固い顔と声で難しそうに眉根を寄せる。
当然の警戒心だ。魔術師にとって魔術王の存在は余りに重い。偽物なのか、本物なのか、判断に困りながらも、アイリスフィールは的確な判断を下す。
「……剣を下ろして、セイバー」
「いいのですか」
「ええ。キャスターが本当に魔術王であるにしろ、そうでないにしろ、セイバーとランサーを同時に相手にしようとするほど無謀そうな殿方にも見えないわ。とりあえずは、話だけならしてもいいんじゃないかしら」
「……」
えもいえない罪悪感に、マシュが困り顔をした。すみません、孤立してるのは貴女達なんです……そんな貌である。
マシュは可愛いなぁ。遠い目をしそうになりながら、俺は微妙に哀しくなる。いっそのこと本当の事情を話して協力者になって貰うのも視野に入れているが、ぶっちゃけこの時代の人間である彼女には全く信じられないだろうから、信じざるをえない状況になるまでは騙しておくしかない。
今後じわりじわりと種を撒き、こちらに引き入れる工作をしよう。アルトリアと英雄王以外は斃れて貰うのだ、なんとかしたいものである。後、蟲老害にも試さにゃならん事もあった。
雷鳴を引き連れてやって来る征服王の気配を感じながら、俺は何気なくロマニに念話を送った。
『ロマニ。後でいいから、彼女から聖杯の器抜き取って、代わりの心臓精製して入れ換える事は出来るか?』
『出来るよ。まあその場合、彼女の心臓は魔神のものになっちゃうけどね』
『死ぬよりはいいだろ。流石に義母を死なせる訳にもいかない。頼む』
『いいよ。いっそのこと聖杯を浄化して普通に聖杯戦争終わらせるのもいいんじゃない?』
え。
聖杯……って、浄化出来るんだ……。
神代の魔術師の力を失念していた。いや、単にアンリ・マユの頑固汚れのしぶとさに、出来るわけがないという固定観念が出来上がっていたのだろう。
この時、俺は思った。
人理修復が無事終わったら、ロマニと冬木に来よう、と。大体それで丸く治まる気がした。
――結局やる事は変わらないのだが。
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