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人理を守れ、エミヤさん!
槍の主従の憩い
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も、俺は別に冠位の有無は然して重要ではないと考える。保有する戦力の正確な力を知りたいというのは本音だった。

 クー・フーリンは槍の柄で肩を叩きつつ、嘆息して応じた。

「持ってるぜ、冠位(それ)
「お。やっぱりか」
「だがはじめに断っておく。オレは冠位として戦う気はねぇ。オレはサーヴァントとして人理修復に協力するが、これは人間の――お前らカルデアの戦いだ。でしゃばるつもりはねぇよ」
「まあランサーはそうするだろうな」

 分かりきっていたことである。俺の反応に、クー・フーリンは苦笑した。
 場合によっては批難されて然るべき物言いを衛宮士郎は至極当然のものとして受け入れたのだ。
 履き違えてはならない。カルデアは助けて貰う側で、主導して戦わねばならない者。協力してくれる者に大上段に構えていい道理はない。英霊側のスタンスを変えさせたければ、相応の理を用意するのが筋だ。

「ただまあ」

 クー・フーリンは不敵に犬歯を剥く。

「例外はあるがな」
「例外?」
「人間じゃあどう足掻いても敵わない――冠位持ちが戦うべきモノは、死が有ろうが無かろうが主義を曲げて殺してやるよ」

 人類悪、クラス・ビーストのことを言っているのだろう。
 ロマニから聞いたが、冠位の存在はそれへの対抗措置的なものだという。霊基の規模からして桁外れ。人間ではどう足掻いても勝てない災害。
 その時は是非頼む、と俺は肩を竦めた。
 ロマニはカルデアのサーヴァントの括りに収まっているためか、その能力には制限が掛かっている。霊基を強化すれば使える力も増すが、今は精々が神代の魔女メディアの最盛期程度の力しかないという。――初期霊基で何言ってんだコイツ、と俺は思った。比較対象がおかし過ぎる。充分すぎた。
 その結果、彼が知り得るのは全智に及ばず。のみならず、知り得ることの大部分も敵側の魔術王の存在を考慮し伏せられた。
 ロマニ曰く、自分は人間に擬装して霊基を誤魔化すことは出来る。しかし俺や他のサーヴァントを経由して、自分の存在やロマニを通して得た知識が相手に流出することだけは避けねばならない。
 故に俺が知れたのは必要最低限の知識のみ。まあそれもないよりはマシなので、納得はしている。機密とは時に味方にも伏せるべきものなのだ。

 シミュレータールームを出て、俺は掻いた汗をタオルで拭う。
 如何に精巧でも所詮はデータ上の存在、参考程度に攻略方法を考案するに留めた方がいい。クー・フーリンの霊基強化が目的とはいえ、余り根を詰めてやるべきでもなかった。
 クー・フーリンは感心した風に言った。

「いや、しかしあの時の小僧が見違えたもんだ」
「ランサーから見てどうだ。俺は」
「人間としちゃトップランクだ。その異能と頭の切れ、素の実力も勘案す
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