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許されない罪、救われる心
65部分:第六話 暴かれた時その九

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第六話 暴かれた時その九

「どうかしたの?」
「どうかって」
「何が」
「急に慌てだしたけれど」
 少しきょとんとなった顔で四人に問う。
「どうかしたの?」
「い、いえ別に」
「何でもないです」
「本当に」
 必死に取り繕う四人だった。そして何とか演技に入った。
「じゃあ私達がですよね」
「その。椎葉さんをいじめていた相手を探す」
「そうするんですね」
「ええ、御願い」
 こう話す皐月だった。
「もう許せないから」
「あの」
 ここでだ。如月がその皐月に問うた。
「それでなんですけれど」
「どうしたの?」
「その犯人を見つけたらどうするんですか?」
 気になってだ。ついつい問うたのである。
「いじめていたその相手は」
「勿論容赦しないわ」
 強い顔での返答だった。
「もうね。何があっても許さないから」
「そうなんですか」
「若し。こんなこと本当に考えたくないけれど」
 こう前置きしてからまた言うのだった。
「ラクロス部だったらね」
「その場合はどうするんですか?」
「退部よ」
 本気だった。言葉にそれがはっきりと出ていた。
「辞めさせるわ、絶対にね」
「退部、ですか」
「当たり前でしょ。そんなことする娘許せないから」 
 その本気の言葉をまた言ってみせたのであった。
「だからよ。誰であろうとも退部させるわ」
「そうよね、そうじゃないとね」
「ここは厳しくしないとね」
「絶対に許したらいけないわよ」
 皐月以外の二年生の面々もだ。口々に言うのだった。
「そういうことね」
「犯人はラクロス部が総力を挙げて見つけ出して」
「それで徹底的にやってね」
「部員だったら退部」
「もうこれ決定ね」
「そうよ、決めたわ」
 皐月は同級生達の言葉に頷いた。このラクロス部では二年生同士、一年生同士のつながりが深い。所謂横のつながりが強いのである。
「犯人には。とことんまでやってやるわ」
「ええ。それで問題は」
 二年の一人がまた話してきた。
「誰かだけれどね」
「そうよね、誰かしら」
「それがわからないし」
「ねえ、椎葉さん」
 二年生達はやがてだ。その場にいた神無に対して問うた。彼女も当事者、しかも被害者としてだ。今のミーティングに参加しているのである。
「本当に誰か知らない?」
「よかったら言って」
「御願いするわ」
「いえ、私は」
 目だけで少しだけ如月達を見てから。怯える顔で言うのだった。
「何も」
「相手は本当に見てないの?」
「すいません」
 皐月の問いにもこう答えるだけだった。
「本当に誰なのか」
「そうなの。仕方ないわね」
 皐月は当事者からの証言がないことに落胆を覚えた。

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