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許されない罪、救われる心
56部分:第五話 エスカレートその十二
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第五話 エスカレートその十二

「性格も悪くないし。頭もいいのに」
「さてね。それはわからないけれど」
 今はあえてこう言う岩清水だった。
「けれどこれはね」
「放ってはおけないわ、相手を見つけないと」
「そのうち見つかるんじゃないかな」
 今度もわざとこう言ったのだった。
「だから安心していいよ」
「そうだといいけれど」
「とにかくね」
 岩清水はさらに話した。
「今は接着剤を何とかしないとね」
「ええ、じゃあ今はまずは」
「それからだね」
 こんな話をしてだった。今はその接着剤をはがした。全て弥生と葉月がやった。如月達はここでも見ているだけだった。
 そしてだ。苦しみ悲しむ神無を見てだ。今回もほくそ笑んでいた。
「まんまと引っ掛かってね」
「いい気味」
「何もしてない訳ないじゃない」
「趣向を変えたのよ」
 そして誰にも聞こえないようにクラスの端に立ってそこで話すのだった。
「落書きから接着剤にね」
「落書きは見えるけれど接着剤は見えないしな」
「いい感じで成功したし」
「如月の作戦成功ね」
「言ったでしょ?これは絶対に成功するって」
 言いだしっぺらしく最も醜い笑みを浮かべて泣きそうな顔になる神無を見ていた。その横には弥生がいて必死に慰めている。
「見えないのは効くのよ」
「見えないとね」
「それがなのね」
 文月と霜月もそれを見て話す。
「じゃあまたする?」
「そうする?」
「勿論よ」
 如月はまた醜い笑みを浮かべて答えた。
「それとあいつにも直接ね」
「やっぱりそれも続けてくんだな」
 長月も同じく醜い笑みを浮かべていた。そのうえで如月に応じる。
「そっちも」
「そうよ。やり方は色々あるしね」
「色々ね」
「あるっていうのね」
「そう、あるわよ」
 今度は文月と霜月に返した。
「まあ見ていて。アイテムもあるし」
「アイテムって?」
「後で渡すから。場所は部室だけじゃないし」
 場所についても話したのだった。
「だからね。落ち着いてね」
「落ち着いて」
「それでやってくと」
「そういうこと。あいつ絶対に許さない」
 神無への激しい憎悪もだ。同時に見せた。
「こうなったら死ぬまで追い詰めてやるから」
「ああ、もうそうしようぜ」
 長月もだった。憎悪を見せた。
「あいつ、何か見てるだけでむかつくしな」
「部活に何でまだ来るのよ」
「学校自体に」
 憎しみは自然に伝染していた。文月も霜月もだった。やはり憎しみを見せている。それは四人を完全に取り込み歪ませていた。
「この世から消してやるから」
「死ねばいいのに」
「自殺するまでやってやるわよ」
 話す如月の顔はこれまで以上に歪んでいた。
「それでいいわよね」
「ああ」

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